いつもと同じ
ある朝、動物の鳴き声(しかも耳元)で目覚めると、とても生き生きとした表情で私を見下ろすポンデライオンと目が合った。
何かあったのかと思い、慌てて体を起こしてポンデライオンに声をかけた。
「何かあった?」
そう問うと、なんとも楽しそうな顔をして私に一枚の紙切れを差し出した。
ちまちまとミスタードーナツに通う私としてみれば見慣れた紙。
そう。ポンデライオンが差し出したのはミスドカードの下半分、銀はがしがついている方だったのだ。
私はまじまじとポンデライオンとそれを暫くの間見比べて、重苦しい息を吐いた。
「…これさ、この間交換したからもういらないの。所謂残りね」
そう言うと、ポンデライオンはぶんぶんと首を振り回した。しかも、「がおー」の雄叫び付き。
……何が気に食わないんですか。
そんなことを視線に含ませてポンデライオンをじっと見下ろすと、ポンデライオンが呆れたようにゆっくり首を振った。
うわ!何か馬鹿にされてるような気分。
人間以外の動物から馬鹿にされてるって感じるなんて…なんかなあ…。
そうやって考えていると、ポンデライオンが削り残した銀を器用にも綺麗に剥がしていた。
「…器用だね」
そうやってしみじみ呟いてみた。
ポンデライオンがそれを聞いてうれしそうに鳴く。
しかし私はポンデライオンの言いたいことを読み取ることができなくて、何を伝えんとしているのか読み取ろうと必死だった。
ポンデライオンも、自分が何を伝えようとしているかが私に通じていないと感付いたみたい。
他の方法で上手く私に伝えようとしているのか、机の上に放られていた雑誌を私の前まで引き摺ってきた。
……あれ、なんで雑誌?
何かを書くんだったらその横に放置してた英語のノート(ああそうだ昨日予習しようとして寝たんだっけ)とかがあるのに。
何があるのか、と思ってことの行く先を見つめていたら、捲りにくそうにしながらも雑誌のページを頑張って捲っていた。
一分ほど過ぎて、ポンデライオンはやっと目的のページを見つけたらしく、そのページのある部分を前足で頻りに叩いた。
「…ここが理由?」
勿論と返すように、ポンデライオンは首を一回縦に振る。
ならば…と私はそこに視線を落とし、ゆっくりと文を目で追った。
そこには、ゴシック体でこう書かれていた。たった4文字のひらがなで、「おそろい」と。
そのおそろい、の言葉を踏まえて私はもう一度ミスドカードに視線を移した。
10個のドーナツマークを集めれば、エンゼルダゾウのストラップ。
もう一度雑誌に視線を移そうとすると、ポンデライオンが私の携帯のストラップ――この間ゲットしたばかりのエンゼルダゾウの――を前足で突付いていた。
あ、今私ピンと来た!
「ポンデライオン、私とおそろいのストラップ欲しいの?」
その言葉は恐らく当たっていたのだろう。
ポンデライオンが「そう、その通り!」と言わんばかりの輝かしい目で私を見上げる。
そっかそっか。おそろいのストラップかあ。
うん、だったらもう一個くらい…いいかな、いいよね。
「うん。じゃあミスド行くね」
そう言って、箪笥から服を引っ張り出して着替え始めることにした。
ポンデライオンは鼻歌でも歌いだしそうな勢いでベッドまで持ってきた雑誌を机に戻しているのが見える。
……今日ぐらい、ポケットの中に入れた状態でだけど、ミスドに連れてってあげてみようかな?
可愛らしいペット(?)のことを思って、私は心中でくすくすと笑った。
2005/07/30
このサイトで一番相思相愛かもしれないこの二人。言葉が通じないのがこの先の課題です。
意外とみなさまに人気のこのポンデライオンシリーズ。
お気に召して頂けたでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです。ではでは。
この小説は、このサイトに来てくれた皆様と、リクエストして下さったゆえ様へ!
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