朝霧
「光國くん? どうしたの?」
「……別に」
ぎゅう、と後ろから抱きすくめられる。
読んでいた本は光國くんの手によって閉じられて、ソファの下に落とされた。とすん、音を立てて、絨毯の上に落ちた。
首筋にあたる光國くんの髪の毛がくすぐったくてこそばゆい。
「くすぐったいよ」
光國くんはその言葉に返事をしないで、また私の首筋に額を埋める。
温かい光國くんの温度が、じんわりと私に沁み込んでいく。
「」
「なあに?」
後ろから抱き締める腕の力がほんの少しだけ強くなる。
そして手持ち無沙汰そうに、光國くんの指先が私の薄桃色の爪をゆっくりとなぞっていく。
それが妙にくすぐったくて、私は咽喉の奥でくすくすと笑ってしまう。
すると光國くんはつまらなさそうに不満の声を上げた。
「?」
「あ、ごめんごめん。光國くんのこと笑ったわけじゃないの。ちょっとくすぐったかっただけ」
「ふうん……」
考え込む仕種で、そのまましばらく。
どうしたのかと聞こうと思ったけれど、その前に光國くんのとある行動により私は驚いて何も言えなくなってしまった。
光國くんは、ひょいと私の右手を持ち上げたかと思うと、その人差指を、ぱくりと口に咥えた。
「――――――っ!? ちょ、え、な、…な何を……!?」
「んー? どうした」
「どうした? じゃなくて…!」
ちゅ、とこれ見よがしに音を立てて咥えていた指にキスをする光國くん。
一瞬で自分の顔が真っ赤になるのが、見なくともすぐわかる。
見たらきっと、予想以上に赤くて見るのも嫌になるぐらいなんだろうなあ……。
「」
「……何…?」
光國くんは気にせずに飄々とした風で、全く気にせず私の手の甲にまでキスをしている。
「…これでも、くすぐったいだけか? ――」
耳元で噛み付くように囁かれた声に、私はさらに顔を赤くする以外のことが出来なかった。
自分の顔が赤く上気していくのが感覚でわかる。
「光國、くん」
震える私の声が光國くんの耳に届いた瞬間、私は見える世界がぐるり回転した。
光國くんの強い目と目が合い、小さく声を紡いだ。
「 あいしてる 」
2005/09/04
久し振りに書いた姿光國氏。む、むずかしひ…! そしてはずかしひ…!
でもなーすっごい好きなんだよね、光國くん。
リクエストがあるってことは需要があるってことですよねー。実はとっても嬉しかったんですよ。
最後の台詞は、ヒロインさんでも光國くんでもお好きなほうが言ったことにしてください。
まあ、楽しんでいただけたら幸いです。
この小説は、きてくださった皆様と、リクエストして下さった辰巳あやめさんへ!
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