ループ
「ウェンの髪って綺麗よね」
「ん?」
「さらさらしてて羨ましい。私、この髪大好き」
そう言ってウェンの髪を指でさらさら梳く。
勝手に髪をひとつに結んでいた紐を解いて、ぱらぱらと髪で遊ぶ。
「……そ。サンキュ」
「うん」
そっと手が伸びてきて頭を撫でられる。
二人顔見合わせると、くすくすと思わず自然に笑みがこぼれた。
そして、髪を指に絡めながら話し掛ける。
「…ね、ウェンの髪、結ってもいい?」
「……」
「ダメ?」
「……ダメだ」
「どうしても?」
髪の毛を撫でながらウェンの顔を覗いて問う。
「……あーわかった。好きなようにしろ」
「わ、ありがとウェン」
許可が下りたので、自分の髪を結んでいたゴムを取って、ウェンの髪を一房すくう。
どうやって結ぼう? やっぱり王道に三つ編みかな。それともツインテール?
髪先を指でうりうりと触れていると、ウェンの溜息交じりの声が聞こえてくる。
「…本当に結ぶのか?」
「うん。今どうやったらウェンが可愛くなるか思案してるとこ」
「可愛くなんかしなくて良いっての」
「私が、したいの」
『私が』と強調して、私はウェンをツインテールにしようと決意した。
ポケットから櫛を取り出して、ちょうど真ん中でわける。
右のほうの髪の毛を一纏めにして色々とやっていると、またウェンがポツリと呟く。
「」
「んー? なあに?」
「…そんなことしてて楽しいか?」
「楽しいよ? ウェン…もしかしてつまんない?」
ふと不安になってそう問い掛けた。
それでも、私がウェンの髪の毛を結ぶ手は休まない。
ウェンが一瞬考えるように謎の呻き声をあげて、そしてすぐに返答してくる。
「つまんないって言うより、……暇?」
「そっか暇かあ…ごめんね。でも、もうちょっとで終わるから待ってて」
左のほうを右のほうと同じように一纏めにする。
ウェンはもう諦めたのか何も言わずに私が髪を結び終えるのを待っていてくれた。
「…うん。できたー」
「おう、そうか」
「あ、見る? 鏡あるよ」
「……別にいい、てか見たくない」
「折角可愛くなったのに」
ぼそりと呟いて、櫛をポケットに入れる。
はあ、とウェンが溜息を吐いて私のほうを振り向いた。
「ウェンー?」
「可愛い可愛いって、俺は可愛くなるよりも」
そこで言葉を区切ると、ウェンは私の身体をぎゅうっと抱き締めた。
唐突な出来事で目をぱちくりさせていると、ウェンがさっきの言葉の続きを紡ぐ。
「こーやってと触れ合ってる方がいいけどな」
2005/09/22
……と、いうわけで10000ヒット企画夢もこれで最後です。
バトビーで、ウェンでした。難しくて頭を抱えたい衝動に駆られましたね。
甘々を希望とのことだったので、私に出来る限りで甘くしました。
これが精一杯の甘さです。セミスウィート。
まあ、楽しんでいただけたら幸いです。
この小説は、きてくださった皆様と、リクエストして下さった愛里鈴さんへ!
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