怯える目が睨みつけるように私を見つめる。
これ以上近付かないで、と縋るようにその目が私に訴える。
手を、彼に伸ばす。
彼の肩が、怯えたように震えた。
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2.異常なまでの
「怯えないでよ」
そっと手で彼の頬に触れた。
彼の表情は強張り、背筋は伸ばされ、怯えた目は少し逸らされた。
ああどうしてこっちを見てくれないの?
私はとても好きよ、あなたのことが。あなたはどうして怯えるの?
いっそ怯えるくらいならば私のことは嫌いだ、と切り捨ててくれればいいのに。
「私のことが嫌いなら、そうだと言って」
「嫌いじゃないよ」
「じゃあ、どうして私に怯えるの?」
怯えた目を捉え、私は問い掛けた。
いつもと変わらない声色。いつものように話すときと同じ声で、真っ直ぐに。
いつもと違うのは、私がひなじくんに触れているということ。
ただそれだけなのに、あなたはいつもは違う、怯えたような目で私を見つめる。
触れなければ、普通に楽しそうに応待してくれるのに、どうして?
「怯えてなんか、」
「ううん、怯えているわ。口はどんなに嘘をつけても目は嘘を吐けないの」
そっと頬から手を離せば、明らかに安心したような表情を浮かべる。
…ああ、やっぱり。どうしてこんなに怯えられているんだろう。
何があって私は怯えられているの?どうして、どうして、なんでなんだろう?
「ひなじくん、どうして?」
咽喉がきゅうと悲鳴をあげた。
泣き出しそうになる自分を理性で雁字搦めにして、出てこないようにする。
真っ直ぐにひなじくんを見る目が潤みそうになるのを必死に堪えた。
「…どうして、私におびえるの?」
絞りだしたような声で、ひなじくんに問い掛ける。
まるで今にも泣き出しそうだと自分でも思うような声だった。
こんな声で言ってしまってはひなじくんを困らせるだけなのに。
「……」
「私は、ひなじくんのこと好きだよ」
「…、ちゃん」
「私じゃ、だめ?…どうしても、だめ?」
終いには涙が流れてしまった。
声は震えるし、涙で視界が少し歪曲する。
ひなじくんが、どんな顔をして私の前にいるかすらわからない。
…きっと、驚いたような困惑したような、そんな顔を浮かべているに違いないんだろう。
そっと、ひなじくんの震える手が私の頬に触れた。
ひなじくんの親指が私の涙を柔らかく優しく拭った。
その手はとても震えていたけれど、とても慈しみ深くて、優しかった。
「…泣かないで、泣かないでちゃん」
手がそっと頭を撫でる。
震えているけれど、私を傷つけないようにとても優しく私の頭を撫でる。
ほろほろ溢れる涙は止められなくて、ただただ私はその手の温かさを感じるままでいた。
ひなじくんの震える手は、おずおずと私の頭を撫で続ける。
その温かい手は、何故かとても心地好くて私はそっと泣いたままだったけれど目を閉じた。
「…ごめんね、ひなじくん…」
小さく震える掠れた声で、私はひなじくんに謝罪した。
2005/04/30
…?まあコンセプトは結構昔に書いたLovePhantomと同じです。
女の子と一緒にいて話すだけなら平気だけど触れることは怖いひなじさん。
あああ。なんて捏造具合なのかしら私ってば!
ひなじが好きで仕方が無い女の子と、その子に恋をしかけているけど恋が怖い男の子。
そんな感じで書きたかったんです。ていうか書きました。
お楽しみ頂けたのなら、それ幸いでございます…
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