痛む腰を労りながら鈍い躰を起こした。
太陽が高い。これは、少し寝すぎたっぽい。
通りでいつも以上に体が鈍るんだね。
私は溜息をついて少し乱れた髪を手櫛で直した。
もぞり、横の膨らみが動いた。
……やっぱりまだ寝てたんだ、私と同じように。
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7.甘い拘束
「…はとばさん、起きてくださいー。太陽が高いですよー」
「ん…」
「はとばさんの生返事は返事じゃありませんー」
そう言って蒲団をぱふぱふすると、はとばさんが億劫そうに蒲団から顔を覗かせた。
眠たそうに揺れる青い目が、私を真っ直ぐに射抜く。
…だめだ、私この目に弱い。
見ただけで惹き込まれて、はとばさんのペースに呑まれちゃいそうになる。
「…、」
「何ですか?」
「今何時…?」
「あ、えーと…」
放置していた携帯電話を拾って、時間を確認する。
11時55分。…本当に長々寝てたのね、私たちは。
しみじみ考え込みながら、はとばさんに時間を教えた。
「んー、12時5分前です」
「夜中か…」
「違います。明らかに」
カーテンを開けようと腕を伸ばしてカーテンを摘んだ。
不意に、はとばさんの手が私の腕を掴む。
掴むといっても決して痛いとは思わないくらいに優しく。
掴まれた腕のほうを振り返れば、はとばさんが身を起こして私にそっと口付けた。
「はとばさん?」
私の問い掛けに、はとばさんは答えなかった。
はとばさんが私の腕を引く。…それに従って、私はベッドに倒れこんだ。
ベッドのスプリングが軋む。
「…また寝るんですか?」
はとばさんはその質問にも答えずに、私の目を手で覆った。
一瞬視界が暗くなるけれど、指の隙間から太陽の光が薄っすらと見えた。
はとばさんの手の下で私は目を細めた。
はとばさんの顔が近付く気配がしたので耳を欹てると、はとばさんが低く小さく囁いた。
…ああ、もう。
この人はきっと、私が断れないとわかっているんだ。
私が逃げることは出来ないと、わかっているんだ。
そっと目の上に置かれていた手が離れる。
私は肩を竦めると、やり返すようにはとばさんに頬にキスしてみた。
不意打ちに驚いて、はとばさんの頬っぺたがちょっとだけ赤くなった。
「…あと一時間、だけですからね」
はとばさんの手を握って、私は小さく呟いた。
そして、私はそのまま、目を閉じた。
指に絡む温かさが、とても心地好かった。
2005/05/12
勢い良くばばばーと書いちゃわなかった所為なのかわかりませんが、なんだかなあな仕上がりに。
一日で書ききらなくちゃだめですね、こんな短編は。
はじめの時何書きたかったのかぽろぽろ忘れちゃいますもん。
今度から小説は勢いつけて書くことにします。
囁いたはとばさんの言葉はご自由に妄想…もとい、想像してください。
次回要リベンジ。
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