真っ直ぐ前を見据えるその目を、そのまま自分のものにしてやりたいと思った。
彼が目的を成就するのさえ邪魔してそうしてやりたい、とすら思えて。
今、この自分の手の中にあるメガディアブロスを、粉々に壊してやろうか。
ふっと自分の頭に過ぎった囁きを、私は震える一抹の理性で打ち消した。
私は小さく自分を嘲笑った。
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9.フォークを喉元に
「ビアス。メガディアブロスのメンテ終わったわよ」
「そうか。助かる」
「はい。どんなにド派手に扱っても直すから気にせずぶっ放してやって?」
「ああ」
そっとビアスに渡せば、にやりと猟奇に満ちた笑みでビアスは笑う。
ビアスの手の上にあるメガディアブロスさえもが猟奇に満たされているように見えるのはどうしてだろう。
私が持ったときは決してそうはならないのに。
きっとメガディアブロスはビアスが持ったときに最も輝くんだと思う。
「」
「どうかした?」
「…流石だな」
「お褒めに預かり光栄だわ、ビアス」
ビアスの微笑みはいつもこう。とても猟奇的で、いつも狂気に満ち溢れてる。
このビアスの笑みは私を捕らえ、逃げられなくしていく。
私を捕らえる。何かで雁字搦めにする。私を、捕まえる。
「のメンテの後はいつも調子がいい」
「そう言ってもらえるなんて嬉しいわ」
こんな然して役に立ちそうに無いものでもあなたの役に立つのなら喜んでするわ。
少しでもあなたの役に立てるなら、たとえこの身全てでも、簡単に投げ出すわ。
それがビアスのためになるのなら何だって。
時には、全てを自分のものにしてやりたいとは思ってしまうけれど、それは絶対無理だとわかっているから。
「。もうすぐだな」
「そうね、手に入るんでしょう?」
「ああ。あれが手に入る」
「ふふ…楽しみだわ」
口許に手を宛がって、くすりと含み笑いをした。
ビアスも私に従って笑った。――勿論、ビアス特有の猟奇的なあの笑みで。
このビアスの顔が好き。表情が好き。
「ああ。本当に楽しみだ」
狂気に満ちた、見る人が見れば狂っていると言いそうな顔でビアスは言い放った。
けれど私はそれを狂っているとは決して思わない。
むしろ、一番純粋だと思う。
滅多に表情を変えないビアスの表情の中で、彼自身の感情が最も顕わになっているもの。
ビアスが私の手を取り、私の右の人差指を咥えた。
ぺろり、舌を出して私の指を舐めた。
唐突なビアスの行動に私は目を白黒させたけれど、そのままされるがままでいた。
ビアスが、私に言う。
「そのときは、も共に――」
そこから先は語られなかったけれど、それでもわかる。
ビアスが私に何を言わんとしたかなんて、手に取るように容易に。
「勿論よ、ビアス」
示し合わせた訳でもないのに、同時に声を出さずに笑みあった。
その様は、きっと他人の目には狂ったようにしか、映っていない。
2005/05/28
あわわ、なんでしょうタイトルと内容の差が面白いくらいにありすぎてどうしようです。
フォークはどこへ?喉元なんて描写一切無いですよ?
まあ、ご愛敬ってことでどうか雲の間に投げ捨ててやってください。
ビアス夢書くのは二回目なんですけど、ヒロインが絶対狂ってますねどうしよう。
しかも前書いたやつとほとんど同じだし…芸が無いなあ。
ううん、ビアスの甘いの想像つかないけど今度頑張ってみようかなあ。
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