あら、久し振りですね、最近如何です?
私、今はカイン様のお屋敷でハウスメイドをしています。
そちらもお元気そうで何よりです。

え?
何か面白いことが無かったか――ですって?
…いえ、お掃除してリネンを取り替えて…といった似たり寄ったりな毎日を過ごしています。

面白い同僚のお話とか、ですか…?
んー、じゃあ、そうですね。同僚のちゃんのお話をして差し上げましょう。

ただし、このお話のことは、どうか御内密にお願いしますね。









ひそめておもう










私の同僚のちゃんというのは働き者でして、そしてとっても可愛らしい女の子です。
ただ、可愛いいという形容詞が似合うのは見た目だけです。
中身もそれはもう申し分無いほどに良いのですが、如何せん見た目と噛み合っていないのです。
…そうですね、中身は格好良いとでも言えばいいのでしょうか?
所謂、砂糖菓子のようなふわふわした女の子のような見た目ですが、口から出る言葉は時と場合によって、辛辣な言葉になります。
気弱そうだ、と目をつけて話し掛けてくるあまり身分の高くない男性を言葉だけでノックダウンさせることができるという素晴らしい能力の持ち主です。
私も実は密かに尊敬しています。

私、ちゃんとは同じ部屋で寝起きを共にしています。
ちゃんは毎朝早く起きて私を起こしてくれます。
私は朝が苦手なのでとても助かっています。
まだ眠くてふらふらしている私に、ワンピースを着せてカフスや帽子をつけてエプロンを着させてくれるときもあります。
時々、年若いお母さんみたいだなあ、なんて思ってしまうのはちゃんには秘密です。
あ、話がずれましたね。

そのちゃん、先日、カイン様の近侍の方に告白されてしまったんです!
通常、使用人間の恋愛はご法度とされているのをご存知ですか?
仕事が疎かになり、家でいうカイン様に悪影響を及ぼさないようそうされています。
そこの辺りを管理するのがハウスキーパーです。
間違いが起きないように目を光らせて私たちを監視しています。
ハウスキーパーの腰から下げられた鍵がジャラジャラと音を立てるのを聞いただけで怖いくらいです。
…要するに、ジョシュアさん…あ、この方がカイン様の近侍です…はとても他の人では出来ないようなことをやってのけたのです!

え、ジョシュアさんってどういう人なの――ですか。わかりました。
ジョシュアさんはカイン様と幼い頃から一緒に育ってきたそうです。
「そうです」というのは、私がメイドになったのがごく3ヶ月前で人伝いに聞いた話だからです。
カイン様のお父様…大旦那様がお亡くなりになり、カイン様が不安定になったときも支えていたのはジョシュアさんだと聞きます。
…カイン様と一緒に育てられただけあって、かなり頭が切れる方です。

え、『ジョシュアさんはそのさんって人にとって、結構な優良物件なんじゃないか?』ですって?
ですから、使用人同士の恋は、絶対やってはいけないんです。ご法度なんです!

ちゃんは数匹のにゃんこを飼い馴らしてジョシュアさんの告白を断ったそうです。
あ、にゃんこを飼い馴らすというのは猫を被るっていうのと同じ意味です。
ですが、ジョシュアさんは時々時間を見つけてはちゃんにちょくちょく会いにきました。
もう私たちハウスメイドは『ジョシュアさんはちゃんが好き』だとみんな知っています。
ちゃんにとって唯一の救いなのは、この話がハウスキーパーの耳に届いてないことでしょう。
耳にはいってしまえば、最悪職を失うことにもなりかねませんから。

え?ジョシュアさんが告白した時期ですか?
確か、2週間ほど前のことですね。
その日のうちにちゃんは断って、その次の日から定期的にジョシュアさんがちゃんを尋ねてくるようになりました。

ちゃんはジョシュアさんが来るととても素っ気無い態度をとりますが、本当は嬉しいんです。
…本当は、ちゃん告白されたことものすごく喜んでましたから。
 『私たちメイドは自分の気持ちに素直になってはいけないのよ。わかりきってたこと』 
――ちゃんは、そんな風に言っていました。
自分の好きな人に告白されたら、普通は浮ついて嬉しくて舞い上がってしまうのに、ちゃんはなんて冷静なんだろうと思いました。
でもちゃんのその選択は間違っていなかったと思います。

これから、ジョシュアさんとちゃんの恋愛がどうなるのかわかりません。
ですが、もしこの二人がどちらも幸せになれる道があったら応援していきたいと思っています。



あら、そろそろ私はお暇させて頂かないとならない時間です。
…ええ、今後とも私はちゃんとジョシュアさんの恋愛を見守りますよ。
展開があったら教えて欲しい?
うーん…そうですね、今後、機会がありましたら。

では、さようなら。





2005/04/14
なんとなくいつもと違う感じで書きたくなったから、第三者視点。
それでも一人称だけど。今度三人称の夢を真面目に書いておきたいなあ。
(夢じゃないのは三人称の方が書きやすいんですが、夢は一人称が書きやすいんです)
本当は両想いだけど、正直にならない、なれない、なってはいけないヒロイン。
こういう設定は大好きです。…というより、最近メイドさんきゅんきゅんです。
さて、楽しんで頂けたら幸いでございます。

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