持て余したカラダの情欲
これは愛ではないのだ
「ぁ……くッ」 政宗は短く悲鳴を上げる。行き場を無くし、自由を失った両腕は釣られていて、ぎしりと耳につく音を奏でる。音を発するたびに、自由を奪う縄が手首にぎちぎちと喰い込み、肌を冒す。擦れて赤くなったそこからは、微かに血が垂れる。 馬乗りになって政宗を追い詰めている元就は、その赤い血を冷めた目で見下ろしながら、戯れに縄を引っ張った。ぐ、と無理な力が掛かる。肩に走った激痛に、政宗は小さく呻いた。 「ぅ、ぐぁ」 「ふん……」 元就は表情のない顔で、縄から乱暴に手を離す。がくん、と衝撃を吸収し切れなかった手首から鮮血がこぼれる。 政宗は僅かに眉を動かし、歯を噛み、痛みを耐えやりすごそうとする。が、元就はそれが面白くないらしい。「いっそ悲鳴でもあげれば楽しいものを」と苛立たしげに呟いて、ぐい、と手首の傷に爪を立てた。 「――っ、う」 「そうだ。もっと楽しませろ」 ふ、と息を吐いて、元就は笑った。無表情な笑み。「笑い」とは呼べない、表情を持たない冷たいもの。 右手で縄の結び目を押すと、ぎち、と縄から音が鳴る。縄を伝い着物と床を塗らす紅。征服欲にも似たものが、元就の心中を競り上がった。元就は、戯れか何か、政宗へと顔を近づけた。 瞬間、元就の喉笛に痛みが走る。元就が眉を顰め見下ろせば、喉仏に歯が立っていた。立っていた、といっても、政宗に喉笛を噛み千切るほどの力はもう残っていなかった。微かに歯が食い込むだけ。それでも、食い込んだ犬歯は元就の喉の肌を破り、赤い血を滲ませる。 まともな人の心を持ってないこいつでも血の色は赤いのか、と、政宗はどこか遠いことを思った。 「ほう……噛み付くか。退屈せずに済むな」 政宗に掛かる重さが増える。ぎし、とまた腕が鳴る。軋む音。無理な姿勢を保っている肩骨が軋んだのかもしれない。――このまま肩を壊したら、こいつはもう刀を握れないだろう。元就は冷静に考えながら、いっそう強い力を掛ける。政宗が眉を顰める。額には脂汗が滲んでいた。 「――我を楽しませてみよ」 つ、と、血が落ちた。 write:2007/03/05 up:2007/03/06
喘ぎ声と悲鳴の違いが巧く書き表せない私。
でも野郎はあんあん喘ぐのよりは悲鳴に近いほうが好ましい。 男同士でそんなに好くなる訳ないとか考えてます。 801書きの割に、そういうのに夢見てないんだよなあ、私。 BGM:「眠らないカラダ」Song by 嵐
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