所有のしるしと噛み癖
love-bite!
「三成。腰紐を結べとは言わぬが、せめて懐紙で拭え」 大谷の言葉に、三成は薄く眼を開けた。三成はちらりと自身の腹から胸にかけて吐き出された欲の残滓を見遣り、懈げに右手を大谷に差し出した。横着をするな、と言いながらも、大谷は彼の手に懐紙を乗せる。 三成は乱雑に肌を拭い、無造作に懐紙を投げ捨てた。ばたり、と気懈げに腕を投げ出し、三成は短く息を吐いた。そして、三成は寝返りをうつようにして、包帯を巻き直していた大谷の方に顔を向ける。 「どうした、三成」 包帯を結んでいた顔を上げ、大谷は尋ねた。三成はその問いに答えることはなく、大谷の顔をじっと見るのみであった。 咽喉の奥で笑いながら、大谷は三成の首筋に触れた。鎖骨の下の、赤い所有印。流れるような動作で咽喉仏を撫でると、三成はその手の感触が心地よいのか、そのまま目を細めた。大谷の指先に三成の穏やかな心音が伝わる。 大谷が羽織っただけではだけたままになっている三成の寝間着の衿を軽く寄せると、三成は不思議そうに目をまばたかせた。 「突然何だ」 「何、気になっただけのことよ」 そうとだけ返し、大谷は寄せた襟を人差指でなぞった。そのまま大谷の指は掛襟の首の後ろの部分をなぞる。三成は無感動にその指の動きを享受していたが、その手が離れようとした瞬間、おもむろにその手をとらえた。 「やれ、どうした三成」 三成は、その言葉に返事をしなかった。 その代わり、三成はつかんだ大谷の手、人差指の付け根にかぷりと噛み付いた。犬歯を立て肉を引き裂くような噛み付き方ではなく、ただの軽く歯を立てる程度の、戯れるような甘噛み。 咀嚼の真似事をするように口を動かすと、解けかけた包帯の隙間から覗く大谷の肌に、三成の歯がぶつかる感触がした。唇を離すと、そこだけ微かに赤くなっていた。 「噛むな三成、伝染るやも知れぬぞ」 窘めるような大谷の言葉に、三成は肩を竦めた。 「知ったことか」 告げて、三成は自身が噛み付いた人差指の付け根をぺろりと舐め、そのまま音を立てて口付けた。 「刑部の病なら貰うのも悪くない」 く、と三成が笑うと、誘われるように、大谷の手が三成の手を取った。そのまま、三成の手の甲を蒲団に押し付け、仰向けになった三成を見下ろした。 「――刑部?」 「三成、ぬしが悪かろ」 それだけ告げて、大谷は三成に口付ける。三成の腕が、大谷の首にまわされた。 write:2010/09/25 up:2010/09/26
前回更新の後書きに書いた「噛み付く話」がどんどん発展したら何故か事後になった。何故だ!? うん、まあ、なんていうか、すげえ楽しかったですゲヘヘヘ。 コンセプトは「三成に噛み癖があれば私が嬉しい」でしたマジサーセン。 大谷さんのセックスは、激しくないけど前戯とかそういうのが超長そうなイメージ。 耐え切れなくなった三成が「早く挿れてくれ刑部」って涙目でねだってくれると嬉しいです。わたしが。 ……ごめん、たわごとをのたまいました。誰か形にしてくれないかな。私裏書くの苦手。 |