一滴の苦味が似合う関係
実は、俺に拒否権などなくて。
猛暑のような、熱。茹だるような暑さと、ほんの少しのだるさが政宗を覆う。政宗の、病的ではなく健康的な白い肌には、うっすらと汗が浮かんでいた。疲れとか、色々なものを篭めて、政宗は、浅く息を吐く。佐助はそれを見下ろして、にんまりと愉しげに笑った。 そして、その笑顔を急に真面目な顔に変えて、緩慢な仕種のまま唇を政宗のそれに重ねる。政宗の口内を蹂躙する舌、呼吸さえも奪うような、口付け。 唇が離れるのと同時に、政宗は眉を微かに顰めて、佐助の唇の端をそっとなぞった。 「……、鉄の味がした」 不味い。と、不満そうに呟いた政宗は、指先で口の端をなでる。ぴり、と、微かな痛みが佐助の脳を刺す。 「え? あー唇切ってたか。ごめんねー」 「テメェは本当に自分に頓着しねぇな」 「……それは、そっちもでしょ?」 ほら、また傷作って。と、政宗が口の端を触るのと同じようにして、佐助は政宗の右頬に貼られていた絆創膏に親指をそうっと這わせた。すっと撫でるように、左の親指が動くと、政宗はくすぐったそうに目を細める。 いつも鋭い剣呑な光の灯っている目が、やわらかい表情を描く。 その目と視線を合わせ、佐助はまたへにゃりと笑う。それは、とても幸せそうで、嬉しそうな表情で。そしてそのままゆっくりと口付けを首筋に落とす。もう既に赤が散らばる肌に、もう一つ、赤い痕が散る。宛ら、雪に咲く赤き華のようだった。 「……Stop」 暑すぎて、流石にこれ以上は疲れる。という言葉とともに、佐助の赤毛に政宗の手刀がとすんと落ちる。痛みは、勿論ないのだが。 佐助は眉尻を下げて、仕方ないなぁと言うような顔を作って、 「んー。じゃあ、余韻だけでも。ね?」 と言い、まだ血の苦味がするキスを、した。 write:2007/03/22 up:2007/03/23
雰囲気えろすが目標だったサスダテ現パロ。
多少短めだけど、雰囲気は私の書きたいもの通りにできてちょっと満足。 冬に書く夏の話は季節感を感じないけれど。 |