Kylie Eleison


「――暇だわ。フィフス、構って」
「宿題でもやったらどうだい?」
「もう終わったの」

 『つまらない』とレイが呟くと、カヲルはわざとらしく溜息を吐き、レイのほうを向いた。構ってくれるの? と意外そうな目をカヲルに向けたが、その目が一瞬で驚きに変化する。
 ――カヲルが、レイを押し倒したのだ。

「……フィフス? 何をしているの」
「ん? 「構って」って、ファーストが言ったんだろう?」
「これを構っているとは言わないわ」

 レイが慌てて拘束から逃げようとしていたが、カヲルは溜息交じりに耳元で囁いた。それを聞いてレイの動きはぴたりと止まる。
「――レイ」
「……」
「これでも、だめかい?」

 口角をあげて笑うカヲルから視線だけを外し、レイは呟いた。

「……狡いわ」
「ん?」
「……カヲルは狡いわ」

 カヲルを呼ぶ名が『フィフス』ではなく『カヲル』になったのを聞いて、カヲルはレイの首筋に唇を落とした。

「……レイも十分狡いよ」
「……どうして?」
「知らずにとはいえ、煽ってるんだから、同罪さ」

 白い野に、真っ赤な花が咲いた。





2005/12/03





キリエ・エレイソン――主よ憐れみ給え