とふたり、並んで家まで歩く。俺やの吐く息が、白くなって空気に融けてく。寒さに弱いは、「寒いよう……」なんて呟きながら、ぐるぐる巻きにしたマフラーに顔を埋めてる。正直な話、の寒がりは異常だと思う。
 そりゃあ、女子はスカートだから、男子より寒いんだろうけど。だからって長いブーツ履いてその中に唐辛子(「『○東家の食卓』で見たの! ホントに暖かいんだよ?」って言いながら、一味唐辛子を買う女子中学生ってどうなんだよ)入れたり、「腹巻きしたら暖かい?」って本気の顔で言い出したり、カイロ大量購入したりってのはどうなんだ、と思う。

「孝くん、そんな格好で寒くないの?」

 はあ、と、しっかり手袋をしてる手に息を吹きかけるを横目で見ながら、こっちは溜め息をついてみた。コート、マフラー、手袋、ブーツ。完全防備といっても過言じゃないの横で、俺は学ランにマフラーと手袋しかしていない。

「俺にしてみれば、はそんな格好で暑くないのか気になるんだけど?」

 そう問うと、はぱちくりと目をまばたかせて、小首を傾げた。こういうの仕種が可愛い、とか思ってしまう自分が何か阿呆らしい。何で俺がそんなこと思わなきゃならないんだよ。くそ。なんか悔しい。

「ええっ、まだ寒いよー。セーラー服って、寒いんだよ」

 夏は涼しくて良いけどね、でもね、冬はこの上ないほどに寒くて死んじゃいそうなんだよ。
 は「ああ、もうっ、さむいよっ」と呟きながら、手袋をしてる手どうしを擦り合わせてる。息を吹きかけたり擦り合わせたりもしてるけど、そんなことしたって、寒いもんは寒いだろ。
 つーか、、頬っぺた真っ赤だ。

「わひっ!?」

 ふと、好奇心が沸いて。の頬っぺたに手袋を取った手で触れてみた。――氷に触ってるみたいに冷たい。本当に人の肌なのかって思うくらい。けれど、ほんのちょっとだけ触れたとこがあったかくなった。さっきより、心成しか、頬っぺたの赤さが濃くなった気がした。

「こ、孝くんっ!?」
「わー、林檎みてぇ」
「り、りんご……」

 が複雑そうに呟いた。その様子が、あまりにも可笑しかったので、俺はけらけらと笑う。

「ほら、さっさと帰って暖かいお茶でも飲もうぜ?」
「あ、うん!」

 の右手を引いて歩き出した、冬の帰り道。




りんごのほっぺ

ちょっとだけ、美味しそうだと思ったのはヒミツ。



2006/08/15