久し振りの、本当の自宅。本当は昨日の夜から居たのだけど、昨日は何だかんだでごたごたしてたから、私は今、ゆっくりと久し振りの家を味わっていた。ルリの家は元々親戚だったから、気を張ったりすることもあまりなかったけど、何だかんだいって、やっぱり自分の家が一番落ち着く。
きっと、廉もそうなんだと思う。気を抜いた様子で、うだうだと居間のソファに横たわってる。心地好さそうに目を閉じてるから、放っておいたら寝てしまうかもしれない。
廉の頭のすぐ上の辺りに座ってる私は、廉の髪に指を絡ませながら声を掛ける。
「もうすぐご飯だから、起きてたほうがいいと思うよ」
「う、ん……眠、い」
「寝るならせめて食べてからにしなよ。お母さんたちと食べるの久し振りなんだよ」
昨日は、家についてからの夕飯じゃ遅すぎるからってことで、おばさまに送ってもらってるあいだに外食をしてしまったから、お母さんやお父さんとは食べられなかったのだ。
その言葉に、廉は少しだけまぶたを開けようとしたけれど、睡眠欲の方がまだ勝ってるようだった。開けようとしたまぶたがすぐに下りてきている。それに抵抗しようとしているのか、廉が手の甲で目を擦ろうとするのを、左手でやんわり制しておいた。
「ねえ、廉。久し振りにお母さんの作った料理食べられるんだよ。――寝ちゃうの?」
そう告げると、廉のまぶたが押しひろげられた。――相変わらず、食い意地がはってるっていうか、何というか。
「そ、だね!」
「どうして、そこで力強くなるのかなあ……」
軽く苦笑を混ぜてそう小さく呟くと、廉はぱちぱちとまんまるの眼で私を見上げてきた。言葉の内容は聞こえなかったらしく、眼が「何て言ったの?」と問い掛けてきている。
「何でもないよ。ひとりごとだから、気にしないで」
「ん、」
廉の頭をゆっくり撫でる。指先に絡む髪は、私の髪質と酷似してる。――まあ、色まで全く同じ、とは言わないけれど。少しだけ癖のある髪に触れていると、廉はにへらと何かがほどけるように笑った。私もつられて笑う。
明日は昼過ぎ頃に、お母さんが車で群馬まで送ってくれる。あいてる時間を見つけて自己採点をしたいけど、――多分、向こう着いてからになるんだろうなあ……と、ぼんやり考えた。明日が休みで良かった、と思う。もし明日学校があったら、私と廉は今頃、車の中で寝ているんだろう。
「廉、! 晩ご飯できたよっ」
「あ、はーい」
「わか、った!」
ぼんやり考えていると、お母さんに呼ばれた。私と廉は立ち上がって、ぽてぽてとダイニングへと向かって歩き出した。
Our Home
やっぱり一番落ち着く場所。
2006/08/06