自室に荷物を置いて、さっと自己採点を終える。結構厳しくつけたけれど、結果はまあまあ……といったところ。これなら多分大丈夫だろう、と思う。ほっと安心して伸びをしていると、こんこん、と、ドアが控えめにノックされた。

「あ、はーい、どうぞー」

 がちゃりと戸の開く音がして、廉が紙を持って入ってきた。

「どしたの?」
「ここ、あってるかわかんない……から、見て、くれ、る?」
「どこ? 見せて」

 すっと、廉が私に差し出してきたのは英語の問題用紙だった。廉が指差していたのは、英作文の問題。受け取って、私は問題用紙に視線を滑らせた。廉なりにこうなのかああなのかと悩んだ痕跡が残されてる。私的には、出題意図に沿った解答になっていると思う。綴りの間違いも、文法的なミスも見受けられない。これならちゃんと点をもらえると思う。

「あってると思うよ。うん、きっと大丈夫」
「そっか、よか、った」

 廉が、指折り数えて(多分、点数を計算してるんだと思う)、「なら、多分……大丈夫」と、小さな声で呟いた。廉もちゃんと点数取れたんだ。良かった良かった。心の中でおおきく安心の息を吐いた。廉も大丈夫だという確信に近い何かがあるのか、ほっと安心の息を吐いていた。
 私が自分の問題用紙をファイルに戻していると、廉が「見てくれてありがとう」と呟くように言った。私は振り返って、

「どういたしまして」

 と、返答した。廉は小さく頷いて、「俺も、これ、しまってくる」と自室へ戻っていった。

 私は座っていた椅子の背凭れに背を思いっきり預けた。「んー」と声を上げて、もう一度伸びをする。背筋が伸びて、結構心地好い。
 ――確か、一週間以内に合否が届くはず。届いたら、お母さんに合格したって連絡して、何かしらの手続きをしてもらわなければならないだろう。確か、十日とちょっとで卒業式だから、合否がわかったすぐ後に、中学校生活は終わりになるようだ。中学校の三年間は、長いような短いような――微妙な感じ。長かったといえば長かった気もするし、短かったといえば短かったとも思える。何ていうか、中途半端。女子軟球のマネージャーをやっていたからか、あっというまに過ぎていった感じの方が若干強いけど。
 ……そういえば、廉は「野球をやめる」って言ってたっけ。本当にやめるつもりなんだろうか。何よりも野球が好きだった廉が、野球から離れるなんてこと、するのだろうか。――答えは、ノーだ。私の予測でしかないけれど、廉が野球を止めるなんて、毛頭ありえない話だ。――何だかんだ言っても、廉は『野球』が好きだから。野球が好きで、ボールを投げることにこだわっていたからこそ、エースナンバーを譲らなかったんだろうから。
 西浦の野球部って、強いのかな。……名前を聞いたことないから、多分弱小チームなんだろうなあ。
 ――できれば、廉には野球部に入ってもらいたい。
 そして、ちゃんとした『野球』をしてほしい。そう願う。




ぐるぐるまわる

私の思い。



2006/08/12