埼玉の家に戻ってきて、一週間が経った。引っ越してすぐには生活感がまるで感じれなくて、明らかにお客さん用扱いされていた部屋だったこの部屋も、私の生活する空間に変わった(一週間かけて、変えたんだけど)。壁を一枚隔てた隣りにある、廉の部屋はまだ帰ってきたときそのままで、ベッドの周りぐらいにしか生活感を感じれない。机すら手付かずで、勉強っていうか、説明会のときにもらった宿題はどうなっているのか、少し不安だ。私はついさっき終わらせたけれど、廉は終わってるのかな。聞いてみようか。
 私は立ち上がって、すぐ隣りの廉の部屋のドアをノックした。けれど、返事がない。私は首を傾げた。出かけたのかな?

「廉、開けるよ?」

 いちおう声を掛けて、そっとドアノブを捻る。すんなりと開いたドアの先で、廉はベッドで横になっていた。具合が悪いのかと思って近寄ると、すやすやと規則正しい寝息が聞こえてきた。

「寝てる……?」

 そっと顔を覗き込むと、廉は幸せそうな顔をしてぐっすりと眠っている。朝食は一緒に食べたから、昼寝だろうか。廉の部屋にある時計を確認すると、午前十時。そろそろ起きるべきなんじゃないだろうか。寝すぎたら、夜に眠れなくなる。そっと肩に触れて、廉の身体を揺する。

「廉ー、おはよー」
「……ん、う」
「もう十時だよ、起きなって」

 もう一度揺すると、廉はゆるゆるとまぶたを押し広げる。私はベッドの近くのカーテンを開けて、もう一度廉に声をかけた。

「おはよ、廉。二回目だけど」
「ん、と……おはよう、

 起き上がった廉が伸びをして、へにゃりと笑う。眠りに入ってそう遅くなかったのか、廉はすんなりと起きたようだ。言葉尻もはっきりしてる。意外だ。

「あ、
「なに?」
「今日、ジャージ買いに行くんだよね?」
「ああ、うん。そうだったね」

 そういえば、今日一緒にジャージを買いにいこうって約束をしていたんだった。ついでに、美味しいケーキでも食べて帰ろうって話したっけ(むしろ、こっちのほうが本当の目的のような気がするけれど)。廉はソファから立ち上がって、思いがけず今日の予定を思い出していた私に声を掛ける。

、行こ?」
「……うん、行こっか」

 私は苦笑しながらそう返した。
 部屋に財布と携帯の入った鞄を取りに行って戻ると、廉は出掛けるのは今か今かととても楽しそうな顔をしていた。お財布をポケットに捻じ込んで、喜々として出かけようとしている廉に、いちおう「ちゃんと顔洗ってね」と釘を刺しておいた。




A week

一週間は、あっという間に過ぎる。



2006/09/25