指や手を酷使するから決して綺麗じゃないけど、私はそんな彼の手が好き。
彼の手で頭を撫でられると、とてもとても落ち着く。



その手が好き。
その強い目が好き。
その高みを望む彼の姿が好き。










絡み指











「炎呪の手は頑張ってる人の手だね」


そう言って節々が少しだけ太くなった、炎呪の少し歪な指を指で辿る。
炎呪の手は頑張って努力している人の手。
所々に肉刺があったり、傷があったりしてる炎呪の手。
ちょっと冷たくて、でも優しい。


「…いつも手を触るな、は」
「うん、だって炎呪の手は優しくて落ち着くの」


炎呪は私に触られている左手はそのままに右手を手持ち無沙汰そうに握って開いた。
それを無視して、てのひらとてのひらをそっと合わせてみる。
炎呪の手は、大きくてしっかりしている。


「――俺は」
「え、どした?」
の手のほうが落ち着く」


え、と言う間も無く炎呪に手を取られる。
何故か酷く顔が熱くなった気がした。
そのまま、腕を引かれて炎呪の腕の中にすっぽり包み込まれた。


「…炎呪?」


たどたどしく言葉を紡いでみるけど、予想通り炎呪はそれを見事右から左に聞き流した。
手が握られたまま、炎呪の腕に包まれる。視界は炎呪の首元と、紫色の服だけが占めている。

…手が、熱い。

冷たい彼の手に握られているはずなのに、私の手はすごく熱い。
熱を持っているみたいに。


「それに、のほうが優しいと思うがな」


そう言って握ってた手の指を人差指で撫でられる。
さっき私がそうしていたのと同じようにされたそれ。
でも、自分がするのとは格段に何かが違うように感じられて、なんだか気恥ずかしくなった。
すっと私の指を撫でる指が指に絡まって、また離れる。


胸の鼓動が、逸る。


何かが悔しくて、額を炎呪の胸に押し付けた。
赤く上気した頬なんて、見られたくなかったから。


「……、ありがと」
「ああ」


炎呪はさっき私がしてたみたいに指を撫でたりして指の線を辿る。
絡めたり離したり、撫でたりなぞったり辿ったり。

不意にそれが止んで、どうしたのかと上を見上げれば炎呪の顔が大きく視界を占める。
弾かれたように下を向こうとしたけど手で顎を押さえられてそれ所じゃない。


「え、ええ、ちょ、炎呪…!」


やっぱりこの言葉も右から左に流された。
強い炎呪の眼光に怯まないようにじっと目を見ていると、そっと親指で唇を辿られた。


鼓動が、速まる。


ちょっと荒れた肌の感触が、唇という半ば粘膜のようなところからダイレクトに脳に伝わる。
炎呪の強い目が、私を射抜く。
顔が紅潮して、炎呪の顔が直視できない。顔を逸らそうにも炎呪の手が邪魔してできない。




あ あ 、 ど う し よ う 、 心 臓 が 止 ま り そ う 。





2005/03/08
きゃー!。
甘い小説書くのって恥ずかしいんですねぇ…。
やっぱ自分は切ない小説を書いたり日常を書いたりしてるほうが割に合います…
私のドリームで甘いものは珍しいので希少価値高し。
…至近距離で炎呪さんの強い目を見てしまったら私も心臓が止まりそうです。

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