どうしよう。
こ、これは徹底的に本格的に超絶的にヤバイ。
…ヤバイよ、どうしようもうしめきりだよどうしよう……!

ああんこうやって困っている間にも貴重な時は刻一刻と確実に着実に過ぎていっちゃうよ!


我 が 人 生 最 大 の 危 機 、 到 来 ・ ・ ・ ! ?











ノイジー











…仕方が無い、夏と冬の二回ある某大型イベントで出会った同じ学校の友人?に頼むしかない。
私は小さな溜息をついて右手に握った丸ペンを忙しなく動かしながら左手の携帯で彼の番号を探る。
向こうには向こうの用事があるかもしれないけど、問答無用じゃい!
向こうが電話を取る音が聞こえ、私は矢継ぎ早に声をあげた。


「もしもしひなじ!」
「へ、…?」
「ええ私はです。ちょっとお願いがあるんだけど、良い?いいわよね、うんOKよね勿論!」
「え、何の話なのか教えてホスィ!」
「ひなじ、原稿手伝って!」
「ええ!これからでつか!?」
「イエス、ザッツライト!」


よし、話しながらも一枚ペン入れ終えられたわ。
残り何ページ…だったっけ?
…それすらあやふやって危ないわ。まずいわ本当に助けてひなじ!


「無理でつよ。こっちにも事情っつうもんが」
「ひなじ様ー本当にお願いします…スパコミあわせのこの本だけは落とせないの」
「うきゅー…」


『おねがい』とまた念を押すようにひなじに言う。
ひなじの鳴き声(?)『うきゅー』が困ったような、迷ったような声色のように聞こえた。
もう一度、「本当におねがい」とつなげれば、ひなじが声を上げた。


「…了解しますた。今から行きまつ」
「あ、ありがとうひなじ!原稿終わるまでまともな持成し出来ないけど許して?」
「簡単に予想つきまつ…」
「ぶ、無事に原稿終わったらお茶とお菓子くらい準備するわ。それとものとくん幼少期写真の方が良い?」
「後者激しくキボンヌ…!」
「…りょか。早く来てね。腱鞘炎になりそうだわ」


2、30分…多く見積って1時間くらいすれば来るだろう。
それまでには…まあ全ページのペン入れ、終わるわよね。
トーンに消しゴム、ベタにホワイト。やらなければならないことが多すぎる。どうしよう。

…まあいいや今やらなければならないことを全力投球でやろう。うん、そうしよう。


「…あ。やばいインク無くなった…墨汁墨汁…」


愛用だったインクが切れてしまった。
でも買いに行くほどの時間の余裕も無いわけで、仕方無しに部屋のどこかにある墨汁を探した。
ああ、あったあった。早く続きを描かなくちゃ。
見つかった墨汁を丸ペンにつけ、ペン入れの続きをする。

ポケットに入っている携帯電話が振動した。
慌てて電話を取ると、ひなじの能天気な声が聞こえてきた。


ー、今家の前いるんだけど勝手に入っても(・∀・)イイ?」
「いーよー…部屋の位置変えてないから勝手に来てー」


玄関が開く音がして、ひなじが階段を上がる音がした。
ぼんやり待てば扉が開き、私にとっての救世主(メシアと読む)が後光を背中に立っていた。
ひなじはコンビニの袋を右手に引提げ、にこやかにそこにいた。


「作業一段落したらこれ」
「差し入れ?ありがとひなじ」


そう言って座蒲団を叩いて示し、座らせる。
差し入れは見えないように箱に入れて遠くの方へ置きましょう。
だって途中で食べ始めたら、しめきりまでに終わらないもん。


「えーと締め切りはいつ?」
「えへ、明朝一番に送んないとしめきり破ることになる日……」


そう言えばひなじの顔が真っ青に染まり、大慌てで筆でベタを塗りはじめた。
私も残り2ページ程のペン入れの続きを開始した。
ひなじも私も、この作業は手馴れたもんだと思う。
まあ私たちの出会いも某コミケ(隠れてないわよ自分)だから仕方ないだろうけど。


 * *


「ありがとひなじ。ホント今回ばかりは助かった」
「のとたんの幼少期写真ー」
「わかってる。初売り終了までに3枚程度見繕っておく」


ひなじが買ってきてくれたお菓子を摘みながら暫しの休息。
アーモンドチョコとか、ポテチとか軽く摘んで食べれるお菓子と缶コーヒー。
ああひなじありがとう疲れた体に優しく甘さが染み入るよ…。


「なんか今回のオリジヒロインのとたんに似てる気が…」
「あ、わかる?のとくんモデルなんだよねー」
「…このメガネの人はお兄ちゃんに似てるような気がするんでつけど…」
「うん、こっちはボスさんがモデル」


私の今回の同人誌のキャラクター設定を見ながらひなじは言った。
さすがのとくんラヴのひなじ。
私がわざと似せてることに目敏く気付いたわ。
この間、女装させられてるのとくんを見てこの話を考えた私も私だ。


「…!はお兄ちゃん×のとたん派なの!?」


ひなじが打っ飛んだ発言をした。相変わらずだ。
いや、でも私ボスさん×のとくん派じゃないなあ。ボスさんは受けだと思う。
だって…猫大好き!長身の割に細身!要するに華奢!たくさんの部下!あまり話さないっていうのも高得点よね!


「んー、私としては、忍者さん×ボスさんがいいな」
「キタァ…」
「尾張先輩も私に同意してくれたよー」
「…それってどうなの……?」
「何言ってるの。同士がいるって良いことじゃない」


そう言えばひなじがもごもごとその言葉に同意してくれた。
何を照れることがあるんだか。分類上男性向けになるトーク互いに交わした仲じゃない。
(私、女性向から男性向けまで幅広くいけるの)


「ま、今回は本当にありがと」
「どういたしまして」
「今度は私が原稿手伝うから言ってねー」
「うきゅー楽しみにしてまつ」


私は無事、スパコミに新刊 Love affair を持って参加できました。
ひなじ、本当に、本当にありがとう!

というわけで、今からのとくん幼少期写真渡しに行ってきます!





2005/04/24
た、楽しかった。物凄く楽しかった。このバカっぽいノリ、楽しい…!
ひなじと普通に今時な女の子の恋愛は明らかに難しいので同人作家さんにしてみました。
面白いぐらいにしっくりきて、我ながらびっくりしました。
しかもものすごく書きやすくて…もう驚きでしたね。
尾張さんが すずか×はとば 好きかなんて私にはわかりません。

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