Thank you !
(――こっちの気も知らずに…)
何をしても飄々といなしてしまう、目の前の小さな背中に心で小さく恨み言を呟いた。目の前では全然視線を気にしないで本を読んでいる。
――悔しい。
考え出すと止まらない感情は、いっそ何か相手が驚くようなことをして相手のリズムを崩してやろうという思考に辿り付いた。
「」
肩を小突いて、名を呼んだ。
本のページを捲る手を止め、煩わしそうにそして面倒臭そうに振り向かれる。
「何? 今ちょっといいとこだか――」
振り向きざまに、の頬っぺたに掠めるようにキスをした。
驚いたように目を見開いて、の言葉は最後まできちんとしっかり続かなかった。
してやったり、としたり顔で笑ってみると、ははっと気付いて勢いよく立ち上がった。
「――っな!? え? ノ、マル…?」
…あ、珍しい。が照れてる。
薄らと赤い頬っぺたとか、めずらしい。滅多に見れるもんじゃない。
「、顔真っ赤」
「ほら」とからかうように頬っぺたを突付いてみる。
の頬っぺたが、もう少しだけ赤く染まった。
「照れてるだろ?」
笑って問い掛けると、が一瞬たじろいだ。
けれど、なんかすぐに立ち直って、襟首を掴んでにっこり微笑まれた。
…これで動けなくなる自分が少し……ほんの少しだけ、憎い。
「…たからちゃん唆すわよ」
「…………スミマセン許してください」
「はあ。それでいいのよ」
がそう言うとほぼ同時に、首をぐいと引っ張られる感覚。そして、頬っぺたではなくて、唇に、柔らかさ。
「…っ!?」
「お返し…ていうか、しかえし。文句は言わせないけど?」
にやりと笑う顔に、「ああやっぱり勝てない」と再確認した。
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