虚 ろ 幸 福 論








「」
「つこみ？　どうしたの」


　ぎゅ、としがみついてくるつこみの頭をぽふぽふと撫でてから、ぎゅっと抱きしめ返す。触れたところから、子供体温なつこみのあったかさが沁みこんでくる。例えるなら、空のマグカップに人肌ぐらいに温めたミルクを注がれていくような感じ？　じんわりと沁みこむ温かさは、とても心地好い。


「ー」
「なあにー？」


　つこみが、甘えるようにわざと語尾を伸ばして顔を覗き込んでくるので、こちらもわざとらしく小首を傾げてみた。
　私の反応に怒りでもしたのか、ぎゅうと私の背中に回された腕の強さがほんの少し強くなる。痛みは全く感じない。つこみの私への抱き付き方は、まるで大きなティディベアのぬいぐるみを愛玩してる幼少女みたいだった。


「……ずるいんやけど」
「何で？」
「気付いてんのやろ。酷いやっちゃ」


　憮然たる面持ちで私の目を見て、ついと視線を逸らすつこみ。今どんな表情をしているのかはわからないけれど、頬っぺたが赤くなっているのだけはわかった。その赤い頬は私の目でも見えるから。
　ああもう、なんてつこみは可愛いんだろう。
　こんな可愛いつこみと一緒に居れるなんて、私はなんて幸せなのかしら。


「つこみは、可愛いね」
「男にそういうこと言うん？」


　つこみが不機嫌そうに呟いた。
　その様があまりにもつこみにお似合いすぎて、私は自身の腕の中に閉じ込めてるつこみにそうっと囁いた。
　まるで神格なものに祈るかのようなささやきを捧げる。


「言うよ。だってわたし、そんな可愛いつこみのことが好きだから」


　私は、からっぽマグカップ。つこみは、私を温めてくれる優しくて甘いココア。あなたがいるから、私は意味をなす存在になれる。
　その言葉に照れたのか、私の肩口に額を押し付けたっきりつこみは黙りこくってしまう。
　けれどその時間は不快じゃない。

　むしろ、心地好くて、幸せな時間――





2006/05/02
やべえ、もうGWじゃん急いで書いて仕上げてお茶を濁そうぜSP小説。
つまりは下準備も何もかもさっぱりの全然ダメダメな小説ってことです、はい。
タイトルだけは始めっから準備してて、使いたかったキーワードも鏤めたのに……なんだろうこの仕打ち。
やっぱつこみでの夢は無謀だったか。前（オクビョウ）ので覚えとけって話ですか。
近々仕切りなおしに小説書く予定ー。
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