「ちょっと、早く起きなさ……うわっ」


扉を開いた先に広がるのは宛ら地獄絵図。
左足を抱えて蹲るグレイの姿が一番最初に眼に入った。
右に視線を動かせば、お腹を抱えた状態で呻き声をあげるウェンが倒れていた。
また更に右へと動かすと、蒲団を被って自己防衛しつつぐっすり眠るリーちゃんが。
左の方には、右足を抱えて倒れているツバメちゃん。
そしてその他諸々…。


……何ですか、これ。


死屍累々?










の出来事










「おはよ、グレイ。大丈夫?起きれる?」
「ちょっと、きつい…」
「うわ。腫れてるじゃん。はい湿布。私貼ってる暇無いから自分で貼ってね」
「助かる」


グレイの左足(しかも向こう脛)にはクッキリ綺麗に青痣が出来ていた。
み、見てるだけで痛い…!
私はこうなることを予測していたため、持ってきていた救急箱から湿布を取り出してグレイに差し出した。
手当ては後回しにしてみんなを早く起こさないとならないから、処置は自分でやらせるけど。
また遅刻させちゃうのは困りものだし。


「ウェンおはよう。起きれる?」
「ああ、か。大丈夫だ、受身取れたから、ギリギリで」
「よし、なら早めにご飯食べて準備してね」
「ああ」


ウェンは最小限のダメージだけで済んだみたい。
でも他の人のダメージは恐ろしいわよ、きっと。
だからみんなを同じ部屋にぶち込むのは嫌だったのよ。
絶対あの人の寝相と寝癖の悪さのおかげ(正しくは所為)で、殆んどの人が負傷するから。


「リーちゃんおはよ。もう蒲団から出て頂戴ね」
「おはようございます、さん。もうそんな時間ですか」
「うん、ご飯食べて今日のバトルに備えてね」
「言われなくともしますよ」
「まあ。口だけは達者なんだから」


ぽてぽてとリーちゃんの背中が小さくなったので、私は溜息をついた。
右半分は加害者から遠く離れているから被害が少なかったのね。
問題は左半分。
加害者が眠る付近なのよ…!


「ツバメちゃん、おはよう」
「おはようでごじゃる…」
「足は大丈夫?立てる?」
「大丈夫、立てるでごじゃるよ」
「…ううん、大丈夫じゃないわ。頬っぺた切ってる」


救急箱から絆創膏を取り出して、ツバメちゃんの頬っぺたにぺたりと貼る。
貼ってあげれば、にっこりと微笑む眩しいツバメちゃんの笑顔。
ああああ。とっても癒されるー!


「ありがとうでごじゃる!」
「いいのいいの。はい、朝ご飯食べておいで」
「了解でごじゃる」


ツバメちゃんはとっても可愛い。
寝癖が悪いあの子もかわいいけど、朝だけは正直魔物に見えるわ。
これ以上加害者に近付くのが怖いよ…。


「うわっ!?」


ヤマトが寝ているはずの蒲団に向かって歩いていったら、足払いされて転倒した。
床に敷布団敷いたままだったからそんなに痛くなかったけれど、これ床に直接倒れ込んだら物凄く痛かったよ。
夜中、上からヤマトが降ってきたりヤマトに足蹴られたり…とみんな苦労してるね。


「ちょっとヤマト!おーきーろー!」


返答は鼾のみ。イビキだけ。
起きてよ。あんたが起きなくちゃダメでしょう。
今まで、こんなに起きないヤマトをミエさんはどうやって起こしてたんだろう。
毎日毎日思ってるけど、本当に尊敬しちゃうよ。

いつもは咽喉が枯れそうなくらい大声でヤマトの名前を呼んで起こしてる。
10分ぐらい叫び続けてれば流石のヤマトも起きる。
稀に、グレイがヤマトが起きないまま連れて行ったりする。


「タメゴロー…ヤマト起こしてくれない?」


もう疲れていたので、ダメ元でタメゴローにヤマトを起こすように頼んでみる。
タメゴローは「仕方あるめえ」と言わんばかりの表情を浮かべて、ヤマトの鼻と口を…塞いだ。


30秒ほどそのまま放置した辺りで、ヤマトが咽返って目を覚ました。


「…おはよ、ヤマト」
「おー。おはよ」
「朝ご飯、食べてきてね」
「わかっとるで!」


ヤマトの背中を見送って、私は心の中でタメゴローに土下座して謝礼を述べた。
ありがとう、タメゴロー!

これからはああ起こせばいいのね!


私は上機嫌でみんなが放置していった蒲団を畳んだのだった。


「明日からは苦労せずにヤマトを起こせるわー」





2005/03/20
私何が書きたかったのでしょう。日常?
まあとりあえず、ヤマトって寝癖と寝相悪そうだなーと思って。
炎呪が出てこないのはあれです。チームジャンクとの戦いの最中だから。という裏設定。
じゃあ何故ジョシュアとカインが出てこないんだっていう疑問が浮かぶでしょう。
理由は簡単。カインはいいとこのお坊ちゃんだからみんなで雑魚寝っていうのが出来ないんです。
カインとジョシュアだけ別室取ってます。絶対。

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