まわりめぐる









色々と暇だったので、コンビニで立ち読みでもしようと思い、行って帰ってみると、珍しくソファに寄り掛かって炎呪が眠っていた。
滅多に人に弱みを見せようとしない彼だから、眠るのは近くに誰もいないときだけ。
誰かが近寄っただけでも少し身動ぎするのに、今日はそのまま眠るだけ。
ああ、珍しいこともあるのね、なんて思いながら私は炎呪の顔を覗き込んだ。


「相変わらずキレーな顔。これで女性の4分の1を敵に回してるよ」


いつもより格段に潜めた声で呟いた。
多分、いつもの炎呪だったらこのくらいの声で話していれば起きてしまう。
起きて、不機嫌そうな目で周りを見渡すのに。
けれど今日の炎呪の眠りは深いみたいで、微動だにしない。
普通の人でも少し身動ぎしそうなものなのに、炎呪は身動ぎすらせずに眠っていた。
一瞬、炎呪が安らかに永遠の眠りについたのかとか考えてしまった。
だけどそんなことありえない。炎呪の胸はちゃんと呼吸で上下していた。


「…ねえ炎呪。お疲れなの?それとも、」


覗き込んだまま、見下げるようにして炎呪に問い掛けた。
返答は期待していない。
寝てる人間から返答がくるなんて期待するほうがおかしいと思うけれど。
眠る炎呪は、いつも上だけをひたすら目指すような孤高さは見受けられなかった。

それにしてもどうしたんだろう。炎呪は周りに人がいる状態では深く眠ったりしないのに。
何かあったの?夜眠れないの?
じっと見つめて、声にも出さず問い掛けてみる。
勿論、返答はない。

もぞり、炎呪が小さく身動ぎして、瞼が緩々と開かれた。
炎呪の目と私の目がかち合って、炎呪の動きが一瞬止まった。


「おはよう、炎呪」
…お前どうしてここに…」
「帰ってきたら炎呪が寝てたから寝顔観察してたの」
「…お前」


炎呪の声が少し不機嫌になったけど、まあまあ、と軽い口調で抑えさせる。
じと目で炎呪がこっちを見てくるけれど、その視線から上手く逃げて話を続けた。


「炎呪がうたたねなんて珍しいよね。疲れてるの?」
「暇だっただけだ」
「夜寝てないとか?」
人の話聞け」


軽ーく炎呪の話を無視しつつ、私は炎呪の目の下の辺りを指で撫でてみた。
色とかも変わってないし別に隈なんて無いんだけど、なんとなく、何故か触ってみたくなったから。
そうやって触っていたら、炎呪に腕が掴まれた。


「炎呪?もしかして気に障った?ごめんね」


腕を掴んだまま何も言わない炎呪に、私は流石にやりすぎたかと思いそう謝罪した。
ああもう。私はしていいところの区別がつかないんだよなあ。ダメだよねそういうの。
上からはあと溜息の音が聞こえて、私はちょっとだけ身を固くした。
掴んでない方の炎呪の手が私の頭をぽんぽんと2回くらい撫でて、炎呪が小さく私に囁いた。


「気にするな」


炎呪の声は優しくて、炎呪の手も優しかった。
さっきの不機嫌さは微塵としてないくらいに優しくて、私は途惑う目を炎呪の方へ向けるだけだった。


「夜はちゃんと寝てるし、今寝てたのは本当に暇だったからだ」
「うん、」
「別にお前が目の下触ったからって怒ってもいない。気にするな。はいちいちネガティブすぎる」
「うん…」


ぎゅう、と炎呪の腕が背中に回って抱き締められた。
その温かい腕の中で私はそっと目を閉じて、その温かさをぼんやり脳の隅っこで感じていた。

優しい腕 に 、抱かれ て。





2005/06/19
久し振りにバトビー夢書いたんですけど微妙な仕上がりですね…。
テストで夢離れしすぎてるから、そろそろリハビリしなきゃならないかもしれません。
この小説、前半はテスト前に書いてたんですけど後半はテスト終了後に書きました。
…だから微妙なんだと思います。それだけじゃないとは思いますが。
ヒロインさんの思考が微妙に躁鬱気味なような違うような。

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