幸 せ の 甘 さ
「……あ」
いつも通りの帰り道。よく立ち寄るミスドの中で、私はぼんやり声を出した。
前に並んでいた見知らぬ学生さんが、その声を不審に思ってか不審そうにこちらを見てきたが、その視線には気付かないふりをする。
いくらぐらい余裕があるだろうと思って鞄から出した財布が、想像よりもだいぶ軽い。まさか、と思って小銭を見ると、たった505円しか入っていないという事実が降りかかってきた。
勿論お札なんて入れているはずもなく(だって必要以上入れてると無駄遣いしちゃうんだもの。通学用の財布にたくさんお金なんか入れれない)、私は愕然とした。
どうしよう、と逡巡する時間の余裕もなく、お店のおねえさんが「次にお待ちの方どうぞー」なんてにこやかーに笑いかけてくる。
仕方がない。諦めて、ポン・デ・リングを3つだけ買って帰ることにしよう。
……あーもう。私、ポンデライオンが来てから、ポン・デ・リングに対する財布の紐緩くなりすぎてないかしら? これは喜ぶべきことなの?
「えーと、これとそれとこっちの……で、いいです」
「はい、3点で346円になります」
私はどうしてレジの日本語は日本語として正しくないのに使われ続けるのだろう、と意味がなければとりとめもないことを考えながら、財布から500円玉を取り出し渡した。
……さようなら、私の500円。またいつか会いましょう。
「500円からお預かりいたします」
どうして500円から預かるのよ、と思うのと同時に、接客マニュアルの見直しをすべきではないかと本気で考えた。
お釣りとレシート、そしてカードを受け取り、見慣れた袋ももらって、私はミスドの扉を押し開けた。ひゅう、とまだ肌寒い風が吹く。ああ寒いと体が一瞬震えた。
そういえば今は何時だろうと駅前の時計を見上げると、いつも乗っている電車の時間まであと5分を切っていた。
「うわっ……やばい」
私はほぼ全力疾走に近いぐらいの速度で駅へと走った。
ポン・デ・リングを愛する我がペットに、はやく新商品のポン・デ・リングを食べさせてあげようと。
2006/02/28
超ダッシュの駆け足執筆のポンデライオン。
ネタや更新意欲に欠ける時期はポンデライオンさんが一番書きやすいです。
自分でもそれは夢書きとしてどうなんだと思いますが、本当にそうなんだから始末におえません。
ポンデライオン夢はただでさえ名前変換がないのに、今回はポンデライオンすら出てないという作品になりました。
……本当にごめんなさい。
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