屋上の床に寝そべり(汚いから勿論敷物を敷いて、よ)、ぼんやり5時間目。
今頃、教室で真面目に数学のプリントやってる人たち、ごめんなさい。
寝そべりながらぼーっと青い空を見ていると、私の隣りでのとが携帯を取り出して誰かと話していた。
――自習中の富山くんかな、とも思ったけど、絶対違う。だって猫被り白のとじゃないもの。
ていうか、聞かなかったことにしたいと思ってしまうような不穏な単語が飛び交ってる。
とっ掴まえるだの縛るだの。……「バルヨナの会津」って誰よ。可哀相に、きっと被害者になるのね…。
しみじみ考え込んでいたら、携帯を折るときの特有の音が耳に届いた。
……あら。お電話はお終わりで?
(あの単語と、会津さんのことは聞かなかったことにしよう。覚えてたらきっと泣きそうなってくる)
ダークブルー
「。その青いのどうしたの?」
青い、青いの…?
「何だそれ」と思う逆側で、なんだかボスさんがつけた猫の名前みたい、と小さく考える。
考えながらぼんやりと身体を起こし、身体を伸ばした。
のとの言葉に暫し思考を巡らすも、その「青いの」の示す所がわからず、私は単語の語尾を上げただけで返答を済ませた。
「青いの? 何それ」
「これ」
すかさず、のとの指が膝頭を撫でた。
指が触れるか触れないかのところで、くるりとゆっくり見せ付けるかのように描く。
やることがいちいち厭らしいのよ! 触り方とかいちいちくすぐるように触ってんじゃないわよ!
――とは勿論言えるはずもなく、私はのとの手を軽く叩いて撫でられた膝を見た。
……うわお。見るも無残な青痣。私ってば、何時こんなとこに痣作ったんだろう…?
ていうか、こんなに派手なら気付きそうなものを、何故今まで…?
のとの手を叩き落としたまま考えていると、またのとの指が妖しく動く。
私はすかさずそれに反応し、先程よりも多少強く、手を弾いた。
「……触んなくて、いいから」
「ふうん?」
「…えーと、多分痣だと思います」
のとの表情が意地悪くそして性悪そうに変化するのを見て、私は思わず敬語で返してしまった。
嗚呼。この最強かつ最恐の男に勝てる人はいるのでしょうか?
天に呼びかけてみるも、返答はない。まあ、期待もしていないのだが。
「見事につけるね。ドジ踏んだ?」
「…こんな痣、私記憶に無いけど……」
「へえ。意外と間抜け」
「うるさい」
のとの言葉を一刀両断にして、本当に何時付けたかをぼんやりと思い出そうと試みた。
しかし、その試みは途中でストップさせられることとなる。
……膝に、違和感。というか、激しい、痛み。
「――っ、痛っ!?」
「ふうん。本当に痣みたいだね」
「ちょっと! あんた何してんのよ!」
のとの指が――訂正。のとの手がてのひらが、私の青痣をぎゅうと押し付けていた。
呶鳴れば、「やれやれ」と言うかのようにしてすっと私の膝から手が離れる。
同時に、痛みと違和感が引いていく。
「『本当に痣みたいだね』って何だと思ったのよ」
「別に? 鬱血しすぎた悪趣味なキスマークに見えただけだし」
「……まず相手がいないでしょ。そこら辺はあんたがよーっくご存知なんじゃなくて?」
『黒い』のとなら、ね。そう付け加えれば、のとがにやりと笑う。
――何? 私何か墓穴でも掘ったの?
と思ったのも束の間、ずいとのとに詰め寄られ、背が屋上の柵に当たる。
がしゃん、と音が両端から聞こえた。私はのとの腕と、柵に囲まれて逃げられない。逃げ道が、ない。
「……ねえ、。――『僕』がそのお相手、なるけど?」
のとの声――言葉が、耳の奥にこびりついた。
2005/09/29
うーん。とっても久し振りにブラックシリーズを書いてみました。
迷いなく淀みなくすらすら書ける自分に万歳!
……誉さんを云々することの計画は、数学の時間サボり綿密に計画されていたと。
そんな裏設定。電話の相手はのとファンクラブ副会長さんだと思います。多分。
今回は貸しもないし、のと様的には不完全燃焼かも? と思えるのと様はやっぱり最強です。
戻る