銃創に、優しく、そして甘く。
ねぇ。その痛みはやっぱり、くるしいですか?
「……ド派手にドンパチやったのね」
「いや、血は多いが派手だったわけでは…」
「…どこが派手じゃないって言うのよ」
そう言って嫌がらせをするかのように消毒液を傷口に豪快にぶっ掛けた。
私を心配させた罰よ。反省してよね。
消毒液を掛けた瞬間、低い呻き声が入善から聞こえてきた。
……もう少し、優しくやってあげた方が良かったかしら。
「……」
「ごめん、ちょっと豪快にやりすぎたわ」
「ちょっとどころじゃないだろ…」
「……面目無いわ」
入善の批難するような声色に私はさすがに申し訳なくなって謝った。
でも、まだ入善のじと目が私を見る。
…許して。出来心だったの。
いつものように包帯を巻く。
もうこれにも慣れて、入善の派手な傷にも慣れて、彼の古い銃創にも慣れてしまった。
この見慣れた傷も、始めて見たときは本当に驚いた。
今となっては驚きの要因にすらならないけれど。
「ありがとう」
「ん。どう致しまして」
返り血なのか自身の血なのかわからないけど真っ赤に染まったワイシャツ。
(多分、どっちも混ざっているんだと思う)
肌に張り付いて不快なのか、入善はそれを脱いで白い絨毯の上に――
「い、入善!絨毯に血が付く!やめてやめて!」
「あ、悪い」
「ほら、ワイシャツ頂戴。洗濯するから」
「…頼む」
血塗れのワイシャツを受け取ると、それを洗濯機に放り込んでボタンを押す。
全自動洗濯機って便利よね。時代に感謝。
居間に戻れば、我が物顔で珈琲を飲む入善が視界に入る。
ワイシャツを着ていないから、勿論上半身は裸だ。
……ここ、私の家なんですけど。
「ほら」
「……ありがとう」
ソファに座って、入善から手渡された珈琲を一口啜った。
ぼんやりテレビを見ている入善の腹部の銃創が視界に入る。
もう見慣れた、かわりばえのしないものだったけれど、私は思わずそれに触れた。
「?」
「…まだ、痛い?」
「いや、もう痛くはない」
「そうなんだ」
指ですうっと何度か撫でる。
そこだけ皮膚が違うような感じ。突っ張ってるような。
撫でていれば、なんだか悪戯心が湧いてきて、私はふっとその銃創に口付けた。
入善の肩が、はねた。
驚いたように、見下ろされた。
「何をしてるんだ、は…」
「キス?」
「見れば、と言うかされればわかるが…」
「何となくだよ」
「…そうか」
もう一度、その銃創に口付ける。
入善はそのまま、私の頭を撫でている。
まるでそれは慰め合いのような、擬似的な哀しみの共有のような。
そんな錯覚を、憶えた。
2005/03/28
何でしょう?このそこはかとなく漂うほんのりえろちかるな感覚は。
ただ、書きたかったシーンは銃創に口付けるシーンだったんです!
銃創に口付け。それは優しく慰めるように。
あ、ヒロインさんが腹部に顔を寄せてるからそこはかとなくエロいのかな?
……色々と欲望に従った小説でごめんなさい。
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