…まだこわいけれど、
まだ言葉というものに怯えたままのぼくから、
手を、伸ばす。
届かないとわかっていても、縋るように泣きつくように。
過去、研究されて育ったことを全て忘れることができたなら、と思うことがあります。
忘れることができたら、他の地球人や異星人のように、もっと自由に生きれるのかもしれないと思うことがあります。
…わかってはいます。
所詮これは逃げでしかなくて、実際できても逃げ切れやしないなんてことは。
手に持っていた特殊ペンをポケットに入れて、ぼんやり空を見上げました。
「シオン?」
「…さん」
「どしたの、そんな暗い顔して」
「…暗い顔なんて、してましたか?」
「うん、物凄く暗いよ」
さんはそう言うと、ぽんぽんと僕の頭を軽く叩きました。
叩いたといっても、まるで赤子や子供をあやすみたいにとても優しく。
正直、何をしていいのか、戸惑いました。
でも、その手から伝わる優しさがとても暖かくて僕はただされるがままになっていました。
「なんか嫌な夢見たとか、何も知らない子供に何か言われたとか…えーと他に…」
「…そういうことはありません」
「…じゃあ何があったの?」
真っ直ぐな目で、見つめられました。
さんが真剣そのものといった表情で僕を見つめました。
でも、僕は何があったかを言えるほどの勇気はありませんでした。
「…特にはないです」
そう言えば、さんが不機嫌そうに眉を顰めました。
「…あのね、シオン」
「はい」
「本当のことを言って」
「…え」
さんは静かにでしたが、しっかりした口調でそう言いました。
僕は冷水を掛けられたような感覚がしました。
言いたくない。
…言ってしまえば、きっとさんは僕に幻滅する。
今までのように接してはくれなくなる。
「言いたくない?」
「……できれば、言いたくないです」
「…そっか」
さんは優しく笑うと、僕の頭をまた優しく撫でてくれました。
その指と手はとても優しくて、僕はなんだかふわふわ幸せな気持ちになりました。
「シオン?」
「はい、何ですか?」
「いつか、ちゃんと言えるようになったら教えてね。シオンのこともっとちゃんと知りたいから」
「…はい!」
…いつか、勇気が持てたらさんに言えますように。
あるうららかな昼下がりのことでした。
2005/04/06
やっちゃった…!未来戦隊タイムレンジャー。
大好きだけどナマモノに分類されるから手は出すまいと決めていたのに…。
…ま、いっか。どうにかなる、なるようになるさ。
いまいちヒロインさんがどういう人なのかわかりませんが、
それはお読みになる方の裁量におまかせします。
シオン大好きなんです。さんづけ最高!がコンセプトの夢でした…
戻る