侵食する









溢れ出てくるのはどろどろとしたい感情










手を、伸ばす。
届かない?そんなわかりきったこと言わないで。
ただ欠片しかない希望に縋ってみたって良いじゃない。
別に、誰もそんなこと咎めないでしょう?
まあ妄りに目くじら立てて怒るようなありがた迷惑な人もいるかもしれないけど。
(そもそもありがたくもなんともないから単なる迷惑な人よね)



「なあに、ビアス」
「メンテは終わっているか?」
「メガディアブロスのメンテ?もう済んでるわ」
「すまないな」
「気にしないで」


そんな細かいことまで気にされてたら息が詰まっちゃうもの。
あなたは何も気にせずに思うが侭にやっていればいいわ。
私はそれについていくわ。
3歩下がって、なんて女々しい真似はしないけれど。
3歩なんて下がってたら向上心の高いあなたのこと。すぐに見失ってしまうわ。
そんなヘマは絶対にしないと確実に言えるけれど、少しでも近くにいたほうが良いじゃない?


「もうすぐだ。もうすぐあれが手に入る…そのためにはヤマトを」


あなたはいつもそこで言葉を止めて猟奇的に笑む。
私はその笑みに答えるように含み笑いをする。
嗚呼、なんてヤマトは憎たらしいのかしら。
あなたをそんなに猟奇的な表情に出来るのはヤマトだけだなんて。
酷く憎いわ。いっそ私が仕留めてやりたいと思うくらいに。
でもそんなことはしないわ。ヤマトを仕留めるのはあなただけだもの。


「そうね、はやくヤマトを完膚なきまでに壊して?」
「ああ、楽しみだ」


そんな楽しげな顔をヤマトのことを話す最中にしないで。
あなたがそうするたびに、私の心を黒が侵食していく。
もとより白くなんかなかった心だけれどまた尚更黒く侵食されていく。

あなたが狂おしいほどに愛しい。
私の名を呼ぶ声も、気紛れに私に触れる指も手も、真っ直ぐな紅い目も。
全てが私を狂わせて、私をもう逃げられないように捕えていく。



「…なあに?」
「共に、ヤマトたちを、粉々に壊そう」


手が、差し出される。
ああなんて甘美な誘い。
私を侵食していく、甘美な甘さ。
脳の真ん中を支配して侵食していく。



「…ええ、喜んで」



差し出された手を迷いなく取った。
あなたが私の手の甲に軽く口付けた。

あなたが望むなら、私は迷わず、侵食する黒を切り捨てるわ。
あなたの為なら何だって形振りすら捨てて、あなたのもとにいるわ。


さあ、共に世界さえも壊してしまいましょう?





2005/04/09
あはは。怖いですね、ヒロインさんってば。
ある種無償の愛みたいな感じで…無理ですか、そうですか。
ビアス相手の夢が読んでみたいというアンケ結果を見て考えた夢です。
恋愛は書けそうにありません。ビアスは可愛いのになあ。
これだけ色を変えてるのは白地に黒で書くのは憚られたからです…。
読みやすいと良いなあ。

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