でもさ、ならないんだよね、絶対に









あなたというが、自分だけのものになればいいのに










「…ねえ、菫」
「どしたの
「何か、好きだって気持ちに気付いてからすごく欲張りになった気がするんだよね」
「あー…なんかわかるよその気持ちー」


ファミレスで甘いものなんかを食べながらのほほんのんびりティータイム。
菫はチョコパフェ、私はチョコレートケーキ。
互いにチョコ系のお菓子っていうのは気が合ってる証拠なのかしら?


「…わかってるのよ。
 顔を見知っただけの関係で、向こうはこっちの名前すら覚えてないだろうことぐらい」
「うん」
「…でもね、なんかさ、独り占めしたくなるっていうか…ああ、もうっ!」
「無理して言うんじゃないよ」
「ううう…こんな乙女ちっくなの柄じゃないよ」


テーブルに体を預けて倒れこむ。
なんだか色々と考えすぎたのか何なのかわかんないけど、脳の思考回路がパンクしそう。
こんなに考えるのってテスト以外ではないような気がする。


「まあね、私だって柄じゃないわよ乙女チックなんてさ」
「…菫は似合うと思うけどなあ」
は私を何だと思ってるのよ」
「カツさんに恋する乙女ちゃん」
「じゃあ私だってのこと『ノマルさんに恋する乙女ちゃん』って認識するわよ」
「あ、ごめん。それは勘弁」


すっと右手を上げて菫を制する。
菫がけらけらと声を上げて笑うのが聞こえる。
『乙女』なんて称号はもっと可愛らしくて砂糖菓子みたいな子につけてあげるべきだったわね。


「でしょ?でも私も自分だけのものにしたいなあとか思ったりするよ?」
「カツさんを?」
「勿論。と違って、カッツさんは私の名前を知らないのにそう思ったりするよ」
「菫と私は同じ穴の貉ってわけ、か」
「そゆこと」


ただ府内さんのことを好きだという気持ちに素直になっただけだった。
ただ、それだけだったのに自分が少しだけ我侭になって欲張りになった気がする。
絶対にできっこないってわかってるのに。
好きなだけでいれればそれだけで良いなんて思ってたのに、今は?
…それだけじゃ いやだよ。


「あー…私、自分がこういった恋の柵に囚われるなんて思ってもみなかったよ」
「そうなの?」
「恋の話とか楽しんで聞いてたけど自分がそうなるなんて夢にも思わなかった」
「うっわ、に真剣に相談してた子がものすごく可哀相ー」
「我ながら申し訳無いことしてきてたとは思うわ」


そう言って、最後の一口となったケーキを口に運んだ。
菫が過去を思い出すように目を細めた。
菫が食べていたパフェも、もう空だった。


「私も囚われてるなあ、カッツさんに」
「ふふ、じゃあお仲間さんだね私たち」
「そうだね」


府内さんが好き。その気持ちに気付いた。
でもその想いは、報われないし届かない。
そうわかってはいるけれど、府内さんが自分のものになればいいのに、と叶いもしない希望を胸に抱く。
…この気持ちにふたが出来たらどんなに楽でしょうか。



叶わないとわかっていても希望に縋りついてしまうのはどうしてでしょう?





2005/04/10
ごめんなさいこれかなりの拙作です…!
そもそもノマル相手のはずなのに出てきてませんし…
The last resort…シリーズ化しましたね、いつの間にやら…。
ノマルにライブで一目惚れした女の子と、その親友の報われない恋の話?
普通に恋愛させるのもいいとは思うんですけど、如何せんそこに至る道筋が思いつきません。
…本当にすみません。今後リベンジします。