こんな毎日が









永遠にもた、このひとときに










真っ赤な夕日に、真っ直ぐに伸びる影。
私の白いはずの肌もほんのり赤く色づいているように見えた。


「炎呪…?」


炎呪は私の手を握ったまま何も言わずに夕日を見ている。
炎呪の双眼は夕日を真っ直ぐに捉えている。
その姿は、まるでいつもの炎呪と違うって、何だか炎呪は弱々しく見えた。
でも、それに触れるのは最大の禁忌のように感じて、私は炎呪の名を呼ぶことしか出来なかった。

暮れなずむ空。
群青色と赤色に塗りわけられたキャンパスのよう。
限りが見えないんじゃないかなんて有り得ないことを思うほどに長い影。

強く握られた手。
炎呪の手は酷く冷たいけれど、私の温かさと混ざってぬるいような感じ。
私の体温が炎呪に奪われているような錯覚すら憶えた。


「…暮れそうで、暮れないね」


返事を期待したわけでもなく、この沈黙を打破したかったわけでもなかった。
炎呪と二人で過ごす沈黙の時間はむしろ私にとって居心地のよいものだから。
ただ、このまま沈黙のままでいると夕日に炎呪が飲まれてしまうような言い知れない恐怖に襲われただけ。

それでも、炎呪はたいした反応を示さずに夕日を見上げている。
時々私の手を握る力が強くなったり弱まったり、といった反応ぐらいならあったけど。

炎呪は滅多に弱みを見せようとしないから、私の隣でこんな風になっているなんてとても珍しい。
だから出来る限りのことはしてあげたい。
でも何をしてあげるべきかわからないから、ただ炎呪の隣にいて一緒に夕日を見るだけ。
もっと他のことを炎呪にできれば良いのに。
そう思うとなんだか自分が情けない。


「…綺麗だよね」


私の口から紡がれたのは使い古された陳腐な形容。
誰しもすぐに思いつくような、無個性な形容だった。
……雄大な自然の前では、どんなに饒舌な人でも寡黙になるのだろうか。
もっと妥当な形容がありそうなものなのに、全然思いつかない。

色々考え込んでいたら、私の手を握る炎呪の力が不意に強くなった。
炎呪に、腕を引かれる。


「炎呪?」
「……
「…何?」
「帰るぞ」
「あ、うん」


炎呪と手を繋いだまま、だんだん暮れ行く道を歩いた。
街灯に明かりが灯る。

本当に長い影の先、私と炎呪は、確かに繋がっていた。


これから、炎呪が不安になったときはどうすればいいんだろう。
私は炎呪の望んだ通りにいれたのだろうか。
むしろ、邪魔だったりしなかっただろうか…。


「迷惑掛けたな…助かった」
「……え?」
「何でもない」


照れたように炎呪が顔を背ける。
…赤い頬、見えてるよ。
ただ隣にいるだけだったけれど、炎呪はそれで良かったみたいで安心した。


「ねー炎呪。晩ご飯何にしようか?」
「別に…どうでもいい」
「そう?」


炎呪の手を握る力を強くしてみる。
こんな毎日がずっとずっと続けば良い、なんて想い込めてみたりして。





2005/04/11
タイトルと内容の相違はもう気にしないでください。
ちょっと不安になってる炎呪さんと手を繋ぎたかっただけなんです。
トップバッターが炎呪でアンカーも炎呪でした。
こんなタイトルと内容が違う小説でも楽しんでいただけたら幸い。
これにて、『微妙な19のお題』は終了です!
ありがとうございました!

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