俺には、好きな子がいます。
その子は、高飛車でへそ曲りで天邪鬼だけど、ホントは淋しがりやなかわいこちゃんだ。
へそ曲りだから思ってる事とは逆のこと言っちゃうんだよな。










セレナード










「ヱリ花ちゃん、今日も可愛いね」
「う、五月蝿いですわ。見え透いた持ち上げしないほうがいいですわよ」
「持ち上げじゃないって本心だもん」
「じょ、冗談も休み休み言いなさいですわ!」


ニコニコと人当たりの良さそうな笑顔を浮かべてそう言えば、ヱリ花ちゃんはいっつも俺の言うことを否定する。
「可愛い」って言うと、いっつも頬っぺた赤くするんだぜ?
もー可愛くて可愛くて仕方ないって。
はじめて会ったときは「偉そうに踏ん反り返っているお嬢様」なんて印象しか受けなかったけど、第一印象って実は全然あてにならねーんだな。


「本当に可愛いねーヱリ花ちゃんは」
「だから冗談は、」
「冗談じゃなかったら何回言っても良いんだろ?」
「…そ、そういうわけでもありませんわ!」


赤くて柔らかそうなほっぺでそんなこと言われても説得力無いよー?

そう言ってそっと頬に触ればヱリ花ちゃんのほっぺが一層赤くなる。
まるで熟した林檎だな。――甘そう。すっげー甘くて、美味そう。


「…わ、私を揶揄するのも好い加減に……」
「からかってるわけじゃねーよ。だって本当に可愛いじゃん」


頬っぺたに触れてた手を放して、長めの髪を一房とってみる。
んー、ツヤツヤのいい髪だ。こういう髪は触らなくても見てるだけで綺麗だよな。
触ったら触ったで心地良いもんだけど。


「さっさと止めてくださいですわ」
「何で?」
「あなたの態度からは誠意が感じられませんわ」


そう言ってヱリ花ちゃんは俺の手を叩き落とした。
オイオイ、なんか何時に無く目が真面目だな…
いっつも売り言葉に買い言葉で口喧嘩じみた事ばっかりやってるけど、いつものその目じゃない。


「私、あなたのお遊びにお付き合いしていられるほど暇じゃありませんの」
「……ねえ、ヱリ花ちゃん」
「何ですの?」
「…俺がヱリ花ちゃんのこと可愛いっていうの、お遊びだと思ってたの?」
「…ええ」


何だよそれ。
俺は至って真面目にヱリ花ちゃんのことが好きなのに。
さすがの優しい俺も…これはちょっとなあ。


「……!な、何するんですの!?」
「別にー…」


なんか一瞬で脱力した。
なーんだ、本気にしてもらえてなかったのか、俺。
ま、確かに飄々としている自覚はあるけどさー…。
なんか色々と口で言うのが面倒くさくなって、そのままヱリ花ちゃんを腕の中に閉じ込めた。
腕の中でじたばた逃れようとするヱリ花ちゃんは、なんだかとっても小さく感じた。


「は、はやく放しなさいですわ」
「ヱリ花ちゃん、ちょっと黙って」
「………」


俺の、何時に無く真面目な声色に、ヱリ花ちゃんが押黙った。
じたばたと俺の腕から逃れようと動いていたのもぴたりと止まった。
ヱリ花ちゃんの後頭部の辺りに手を寄せて、俺は小さく呟いた。



「…好きだ。からかいとかそんなんじゃなくて、本気で」



体を強張らせていたヱリ花ちゃんの力が抜けた。
俺に完全に体重を預けるような形で、ヱリ花ちゃんは本当に小さく呟いた。
耳を凝らさなければ聞こえないような大きさで、でも俺には確実に届く。




「私も、のことが、…好きですわ」





2005/04/17
んー?不完全燃焼だー…。
ヱリ花ちゃんに「可愛い」って言いまくって恥ずかしがらせたかったのに。
というか、手は出すまいと決めていたのに…男主人公×女キャラ夢には…。
…でも、結構楽しかったです。小町ちゃんとかで今度やりたいです。
あー、でもこの文は拙作だったなあ…。

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