不安の波
ぎゅう。
あたたかな西丸ちゃんの体に抱きついて、肩口に額を押し付けた。ちくちく痛む胸。じわじわと痛む咽喉。熱を持ちつつある目。
声を出そうとしても、痛んでからからになった咽喉からはあんまり声が出ない。
「……どうした?」
西丸ちゃんが驚いたように私に問う。
本当は、何かを言わなきゃならない。「大丈夫」って答えて、安心させてあげなきゃならない。「邪魔してごめんね」って言って、しがみつく腕を解かなきゃならない。
だけど、それなのに声が出ない。咽喉からは声の代わりに空気が流れる音が零れるだけだった。
きゅう、と咽喉の奥がいっそう痛くなって、私は西丸ちゃんに抱きつく力を強くした。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」って言わなきゃいけないのに、首を縦に振らなくちゃいけないのに、私は動くことすら出来ずに西丸ちゃんにしがみついていた。
溢れそうになる涙と嗚咽を、丸ごと飲み込んで私は短く息を吐く。
「」
西丸ちゃんがゆっくりと私の名前を呼ぶ。
ぽんぽん、と私の背中がゆっくりと撫でられた。
「……無理、すんな」
私の背中を上下にさすりながら、西丸ちゃんが囁くようにそう言った。
撫ぜられたところがじんわりとあったかくなっていくような感覚がした。その感覚が、私の感情を塞き止めていた氷をゆっくりと融かしてく。
「あの、ね」
落ちそうになる涙を見られたくなくて、西丸ちゃんの服をぎゅっと握り締めた。
そんな私を落ち着かせようとしているのか、西丸ちゃんはまるで子供をあやすかのように私の背を撫でる。その指の感触が妙に心地好くて、私はゆっくり目を細めながら言葉を続けた。
「ちょっと、長くなっちゃいそうなんだけど、いい?」
ぽつりと呟くように言う。
私の背を撫でていた手が一瞬だけぴたりと止まる。でも、またすぐに私の背をゆっくり撫でた。
「好きなだけ、気が済むまで言えよ」
西丸ちゃんの言葉が、ゆっくり沁み込んでくる。
背を撫でていた西丸ちゃんの指先がそっと私に髪に触れた。ぱらぱらりともてあそばれて、髪が重力にしたがって落ちていく。
「何時間かかっても、聞いてやるから」
とんとん。また背に手がまわされて、背中が撫でるように優しく叩かれた。ゆっくり心が正直になっていく。
「だから、無理だけはすんな」
優しい声。優しい手。あったかい言葉。
西丸ちゃんが私にくれるもの全部が、私を正直で素直にしていくように感じた。
「うん……がんばる」
それに返事をするように、西丸ちゃんは、私の身体を壊れそうなものを守るかのように抱きしめてくれた。
ぽろり、涙がひとしずく落ちて。私はその涙に熨せるかのように口を開いた――
2006/02/06
何か精神状態が色々とアレなんで自分の中のデザイアに従って書いたら、こんな風によくわかんない難解論理ズラッと並べる羽目になりました。
うん、少々妙な電波受信しちゃったみたいです。餌を与えないでくださいって感じで。
……ノマルに色々胸の暗闇ぶつけたかったのです。それだけなのです。
まあ頑張って書いたのですが、小説の出来としては微妙だなあと思います。
今後も要精進。がんばる。だってもうすぐテストだし。
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