その手はあまりにも温かかった。
そして、彼はあまりにも独りだった。









その差し出す









ただひたすらに直向きに上を目指した。
ただ、勝利だけに価値があるとし、其を渇望してきた。
そんな炎呪は、ある意味限り無く純粋だと思う。
当人にそう言うと十中八九無言のプレッシャーを与えられるだろうから言わないけれど。


、後ろ乗れ」
「あー良かった。もう歩かなくて良いのね…」
「そうだな」
「…いや、ちょっと待って?炎呪、バイク持ってたかしら?」
「いや…」
「……免許、は?」
「俺の年で取れるものか」
「…………」


バイクを持っていない、ということは…この単車はどっかから盗ってきたものということ。
……そして、免許すら持っていないということは、これを運転させれば、炎呪は無免許運転したということに。


「炎呪…ダメ…それは犯罪!」
「犯罪なんざくそくらえだ、もう慣れた」
「慣れるんじゃないわよ、もう!」


そう言っているのに炎呪はそんなもの何所吹く風といったようにバイクに跨っている。


「早くしろ。置いて行くぞ」
「そ、それは勘弁してほしいんだけど、…でも」


「…さすがに法律違反する気にはなれないような気がするのですが」
とその言葉につなげようとするが、炎呪に言葉を遮られる。


「…サツが追いかけてきたら困るんだが」
「わかりました腹括ればいいんでしょ、乗れば良いのね…」
「ま、そういうことだな」


仕方がないので炎呪の後ろに乗る。
そうっと炎呪の腰に手をまわして前で組めば、少しゆとりがあった。
…細い。物凄く細腰だよ炎呪…。女としてちょっと悔しい。いや、かなり悔しい。


「……しかもノーヘル…前科3犯ね」
「知るか。ヘルメットなんか被ったことなんか無い」
「…だから、炎呪の年でバイク乗るのは犯罪なの」


1拍の間があった。
後ろからだから見えないけれど、きっと炎呪の眼光は、鋭くなってる。
…空気が、変わった。


「しないと生きてけなかったんだ」


その言葉を紡ぐ声はとても小さかった。
注意しなければ聞こえないくらい小さな、まるで呟きのようなそれ。
私は炎呪の背中に額を押し付けた。
炎呪の体に回す私の腕の力がほんの少し強まった。


「…思い出させて、ごめんね」


ぎゅう、と強く抱く力とは正反対に、そういった言葉はとても弱々しく空気に融けた。
また静寂が私たちの間を訪れた。でも、変わった空気が戻った気がした。


、気にするな」
「……本当に、ごめん」


炎呪は優しく言ってくれたけれど、どうしても自分が赦せなくて、懺悔の意味を込めてもう一度炎呪に謝った。
どうしてこんなこと言っちゃったんだろう。
何か泣きそうだ。本当は炎呪のほうが痛いはずなのに、私の胸がきゅうと締まった。

急に、動いていたバイクが止まる。
炎呪の声が、優しく溶け込んでくる。


「今の俺は独りじゃない。だから過去の事はもう平気だ」


どうして炎呪はこんなにも優しいのだろう。
炎呪の優しさは、私にとってあまりにも優しすぎるような気がした。
けれど、今はその優しさに甘んじても良いよね?


「ん。ありがと、…炎呪」
「ああ、だからはさっさと泣き止め」


そっと目を瞑れば感じられる炎呪の温かさは、本当に優しくて。
私に泣き止むように言う言葉も優しくて。

私はずっと炎呪の横にいたいと、心から望んだ。
それは、まるで炎呪がただひたすらに上を目指すのと同じようだと思った。





2005/04/16
えへ。やっぱり私炎呪さん大好きです。だって炎呪が一番書き終えるのはやいんだもの。
でも最近は強い孤高の炎呪が書けてないぞ私!炎呪さん少し弱くなってるよ…。
まあ人間ですし弱いときだってあり…ですよね?
うーん、最近は小説のネタが思いつきにくいですねー…
ス、スランプ…?

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