「。肉まん食うか?美味いぞ?」
「わあウェンありがと。お腹減ってたのよ」
ウェンが差し出してくれたあったかほこほこ、ふわふわの肉まん。
丁度空腹状態も極限に迫っていたのでありがたく頂戴する。
温かい肉まんに齧りつくと、不意に、無数の視線を感じた。
何事ですかそこの青少年達!
スウィーツ
「何か用?この肉まんは私が貰ったものだからあげたりはしないわよ」
「……そういう話じゃない…」
グレイが盛大な溜息をついて私を見下ろす。
この身長差がむかつくのよね。そりゃ、私は女だけどこんな差を付けなくてもいいじゃない。
…いや、やっかみだなんてとっくの前から気付いてるけど。
「さん。これ、あげます」
「いいの?ありがと。チョコ大好き」
リーちゃんが突っ立ってたグレイを足蹴にして(比喩じゃなくて本当に)私に板チョコを差し出した。
グレイが左足を押さえて蹲る。痛い。見てるだけでも痛い。可哀相だ。
そんな風に観察しているうちに肉まんを食べ終わってしまったので、リーちゃんから貰った板チョコの包みを破いた。
指で摘んで、一口口に運ぶ。
「ああ、甘くてしあわせ…」
そう言ってほうっと恍惚の溜息。
甘いものって食べるだけで幸せになれる魔法のアイテムみたいだなんて夢見がちなこと考えてみたり。
あ、グレイが足を気遣いながら起きた。大丈夫かな。あれはきっと痛かったよね…
……ちょっとふらふらしてるよ。可哀相に。
「、俺にもひとつちょーだい」
「いや!これは私がリーちゃんから貰ったんだから他の人にあげる義理なんてありません!」
「俺、リーの兄ちゃんだから、だからひとつ!」
「兄弟だって関係無い!これは私のチョコレート!」
そう言って、もうひとつチョコを食べる。
あー、甘いものはやっぱ体に幸せが染み渡るねえ…。
「じゃあさん。僕にひとかけら下さい」
「いいよー、はい、リーちゃん」
「何!?何故リーがよくて俺がダメなんだ?俺にも!」
「だってこれ元々リーちゃんのものだし?」
「俺のものは俺のもの、リーのものも俺のものだ!」
「……僕のものは全て僕のものです。兄さん、それは横暴です」
冷静なリーちゃんの言葉のナイフがさくっとウェンに刺さるのが見えた。
リーちゃんって時々、年齢不相応に言葉を知ってるよね。
本当はこっちが兄なんじゃないかって時々思ったりもする。
あ、何でか兄弟喧嘩始まった。
「、じゃあ俺にくれ…」
「グレイ。あんた足大丈夫なの?腫れてない?」
「見るのが怖い」
「……可哀相なグレイにはチョコじゃなくて飴をあげるわ」
ポケットに入っていたみるくキャンディをグレイにあげてみる。
すると、グレイはものすごく幸せそうな表情になった。花が飛んでそうだ。
「優しさが見に染み入る…」
「さっきのリーちゃんの仕打ちじゃね…頑張れ」
「おう…」
リーちゃんは表向き普通の子供だけど腹の奥深くでは何を考えているのかわかったもんじゃない。
まあ、所謂腹黒い性格ってやつよね。
それに引き換え、兄はどれだけ純粋に育ったのよ。
「」
「あれ、炎呪。お帰りー。どこ行ってたの?」
「コンビニ」
「そっか」
どっかりと私の座っているソファに座る炎呪。
コンビニの袋からプリンを二つ取り出して、片方を私に差し出してくれた。
「やる」
「いいの?」
「ああ」
「……ありがとう」
肉まんよりもチョコレートよりもそのプリンはとても大切なものに感じられた。
未だ、ユンファ兄弟の喧々囂々と言い合う声が聞こえる。
でももうそんなもの、私には関係なかった。
「スプーンある?」
「探せ」
「……袋にスプーン入ってないよ」
「わかった、貰ってくる」
「あ、待って。私も行くー」
そう言えば差し出された炎呪の手に、己の手を重ねて繋ぐ。
いつもより格段に遅い、私に合わされた歩みのスピードが、とても嬉しかった。
2005/03/05
うわあ。なんだろうこれ。目指したものは逆ハーレム。
気付いてみれば、…なんだろう。ギャグ?
これが私の逆ハーレムの限界です…私にみんなに愛されるヒロインを書くのは無理です…。
これでお楽しみいただけたら、幸いです…。
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