■ ゆっくり ■
「限くん、大好き」
私は限くんの広い背中に背中を預けながら呟く。
『ヒト』よりも五感が鋭い限くんは、絶対聞こえないだろうなあと思って呟いた、私の言葉をも拾ってくれる。
服越しでもほんの少しだけ伝わる限くんの鼓動がものすごく速くなっていて、「ああ限くんすっごい照れてるんだなあ」と実感する。
愛に慣れていなくて、優しさに戸惑って、人のあたたかさに恐怖していた限くんの心は少しでも解けたのかな?
……解けていると良いな。凍ってたら、温かさも何も感じれないもん。
「……ほんとだよ?」
念を押すようにさっきより少し大きな声で言うと、限くんが驚いたのか何なのか、突然に体勢を崩した。
え。と言える間もなく、体重の殆んどを背中に預けて凭れていた私はそのことに反応しきれず床に背をぶつけてしまった。……痛い。
「……大丈夫か」
「へいき。だいじょうぶ」
本当はちょっと痛いけど、限くんにそんな素振り見せたら困らせちゃうし、また自分の所為だって自責するだろうから言わない。
隠そうとしているけれど(そうしようとしてるんじゃないかもしれないけど)、本当はすごく優しくて、誰よりも心の痛みに敏感。
――私は、そんな限くんが大好きで。
「ほら、」
「……ありがとう!」
ぎゅう。繋いだ手が、すごく熱い。
限くんの手を借りて起き上がり、勢いで限くんにしがみ付く。一瞬驚いたように身じろいだけれど、限くんの体は硬直しない。壊さないようにか、そうっと柔らかい手付きで私の背に腕を回す。
「限くん」
「何だ?」
「しあわせ?」
「……そう、かもな」
限くんの幸せが、ずっとずっと続きますように。
心の中で天に祈り、私はゆっくり目を閉じた。
2006/02/03
未だに衰えないこの熱い迸る感情を持て余してます。困った。
サイトにアップするのも躊躇われる作品ばかりですが、久し振りに小出ししてみました。
しばらく更新してなかったしね。
限くん無しで展開していく本誌見てると、気を抜けば泣きそうになります。
……どうしようかなあ。これって恋だった?
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