揺れる波間、かたる静寂 06

。携帯光ってるわよ」
「え? あ、ホントだ。ちょっとごめんね」

 杏子に断ってから、携帯をひらく。機種変更して多分半年くらいしか経ってない携帯。新しい機種が目まぐるしくこの世に誕生している今では、昨日の最新機種が今日の中古だったりするから、これももう二昔前の機種になっちゃう。ちょっとすごいなと思う。まあ、あんまりプラスの意味ではないんだけど。
 メール画面を起動して、受信ボックス。そこには、ここ二ヶ月でメールをやり取りするようになった、懐かしい名前が記されていた。

「……モクバくんからだ」
「あら。めずらしいわね」
「そうかな? うーん、まあ、昔なじみだしね」

 メールを開けば、『今日放課後暇か? 暇だったら遊びに来いよ!』と簡潔なメールが来ていた。今日の放課後は、今のところ、何も予定はないけれど――

「今日の放課後、一緒に帰れなくてもいい?」
「別にいいけど……なぁに、、モクバくんのところに遊びに行くの?」
「うん、そんなとこ」

 もう、ホントにあんたたち仲良しね、と杏子にからかわれる。軽く笑ってその言葉を誤魔化し、「じゃあ、お言葉に甘えて遊びに行っちゃいます」と返信して携帯を閉じる。ぱちん、と軽い音がした。
 デザート代わりに入れたリンゴのコンポートにフォークを刺して、口に運んでいると、窓際から城之内くんと武藤くんのはしゃいだ声が聞こえてきた。杏子が、少し眼を細めてそっちをちらりと一瞥する。

「杏子って、武藤くんと幼馴染なんだっけ。仲良いよね」
「えっ、ちょ、ってば何言うのよ!」

 私の言葉を聞いた瞬間、杏子はかあっと顔を紅くした。すごい、瞬間芸だ。
 たまに武藤君って性格変わる(見に行ったデュエルの大会では性格全然違って驚いたなぁ)けど、ゲームをしてる時だけ性格が変わるタイプっていうのも大変だよなぁ。

「だって、今の目、恋する乙女の目だったよ」

 私がそういうと、杏子は何か言いたげに口を何度か開いたけれど、結局何も言わずに机に突っ伏した。ううー。なんてちょっとうめき声まで聞こえてきて、ちょっとびっくりする。

「……、私そんなにわかりやすい?」
「うーん、そこまであからさまじゃないよ。多分大丈夫。少なくとも武藤くんたちはわかってない……と、思う」

 武藤くんもそうだし、いつも武藤くんといる城之内くんたちともあんまり話さないから、確実に「そう」とは言えないけれど。杏子は、少なくとも、彼らと一緒に居るときは自分の感情を巧妙に隠してるように見える。
 思ったまま口にすると、杏子はなんだか深い溜息をついた。

「なんか疲れたわ」

 机に突っ伏した顔をこっちに向けて、杏子はそう言った。それを見て、私はくすくすと笑ってしまう。

「そう? 私は杏子の意外な一面が見れて楽しかったよ」
「もう! 今度クレープでも奢りなさいよ! 今日一緒に帰れない埋め合わせに」
「はいはい、了解です」

 食べ終わったお弁当の蓋を閉じながら、返事をした。変な弱み握られちゃったなぁ、と呟きながら、杏子も体を起こす。
 そしてまた、取り留めのない話は続いていく。そんな昼休み。
 遠くで、武藤くんがカードのドローを宣言する声が聞こえた。







write:2008/12/03 up:2009/01/14